COLUMNコラム
属人的な「アナログ管理」は、無駄なコストだらけ? スマートマニュファクチャリングの構築を、経産省などガイドライン
2024年6月28日、経済産業省とNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、製造事業会社が直面する経営課題の解決に向けて、「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」を策定し、公表した。このガイドラインは、事業承継のタイミングで、会社の業務効率やフローを見直す際、大きく役立つ可能性がある。
目次
「スマートマニュファクチャリング」とは?
ガイドラインは、スマートマニュファクチャリングを「データとデジタル技術を活用し、自社の製造業に関する各工程のつながりの最適化を図る」ことと定義している。
たとえば、長年にわたり紙ベースで在庫管理をすることで過去の記録を紛失したり、記録や保管が属人的な業務になって在庫やコストを別部署ですぐに把握できなかったり、といったケースが多い。
こうした企業で、在庫管理のシステムをデジタル化することで、各工程の連携がスムーズになり、確認に使っていた時間やコストを削減できるというメリットがある。
なかなか実際に導入できないデジタルツール
ただ、デジタル化やスマート化は何をどのように導入するかの選択肢が非常に多岐にわたるため、なかなか実際に導入に至らないことも多い。よく聞かれるのは、下記のような課題である。
(1) デジタル技術で事業を大きく変えたいが、新たな発想を具体的な計画・施策に落としこむことができない。
(2) 現場を巻き込んでデジタル化やスマート化を検討したいが、目の前の課題にとらわれ、飛躍のある議論にならない。
(3) 自社のデジタル化やスマート化について、ITベンダーからさまざまな提案を受けるが、導入のゴールやものづくりプロセス自体の改革構想がなく、実行に踏み切れない。
(4) システムやツールを導入したが、有効に活用できず、途中でやめてしまった取り組みがある。
(5) 各部門でデジタル化を進めていても、部門ごとに動きがバラバラで会社として大きな変革につながらず、総合的な解決策を見出せない。
スマートマニュファクチャリング構築ガイドラインは、こうした困難を解消する手助けとなりうる。「ものづくりの全体プロセスの捉え方」や「重点とする変革課題の選定方法」など、企画のあり方・進め方に重点をおいているため、デジタル化をスタートする際に活用できる。
アナログは「ずさん」なことも
先代から会社経営を受け継ぎ、経営の「世代交代」が起こったとき、業務効率を見直すことは非常に重要だ。
たとえば、数億円の赤字を抱える企業を先代から承継し、あらためて組織体制を見直したときに、在庫の管理がアナログでずさんなため期限切れで廃棄するものが多く出るなど、大量の無駄なコストが判明したというケースもある。
個人の能力に頼った属人的な体制を続けるのではなく、長く慣習的に続いてきた体制や手順にメスを入れて業務を効率化するため、スマートマニュファクチャリングの構築がカギになる。
取材・文/清野亜紀
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