COLUMNコラム
会社を継ぐとき「相続税と贈与税」が高い壁に、雇用を失わないためには 東京商工会議所、事業承継の支援を国に要望
今年7月、東京商工会議所は「中小企業の円滑な事業承継の実現に向けた意見」を取りまとめ、中小企業庁の山下隆一長官に提出しました。事業承継に関するさまざまな支援を国に要望し、山下長官も「非常に意義がある」と積極的な取り組みを進める意向を示しました。
目次
日本雇用の7割は中小企業・小規模事業者、価値ある事業を失わないために
この意見は、中小企業・小規模事業者の円滑な事業承継を目指し、さまざまな支援や制度強化を行政に要望するものです。東京商工会議所の事業承継対策委員会委員長・渡辺元氏(渡辺パイプ株式会社会長)が、山下長官に直接意見書を手渡しました。
東京商工会議所の「中小企業の円滑な事業承継の実現に向けた意見」によると、中小企業・小規模事業者は日本の雇用の7割を抱え、地域経済の活性化などのためにも安定的な事業継続・発展が求められます。一方で高齢化が進み、後継者の不在などが課題となっています。
また休廃業を選択する企業のうち、半数以上は直近の業績が黒字であることから、価値ある事業を失わないためにも、円滑な事業承継に向けた取り組みが必要だとしています。
意見では「事業承継対策を行う事業者の裾野拡大に向けた支援」、「親族内・従業員承継の取り組み支援」、「後継者不在企業のM&Aの推進に向けた支援」などを国と東京都に要望しています。
例えば、いざ事業承継となってから自社株を評価したところ想定以上に高く、後継者に株式移転する際の贈与・相続税が高額になってしまうケースや、先代が承継の準備をせずに株式が親族などに分散したまま急逝してしまうケースなどがあるとして、事業承継対策に早めに着手できるよう「気づき」を与える情報発信や助成金を活用した自社株式の評価を促す取り組みを求めています。
事業承継の大きな壁「税金」についても要望
また、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予する事業承継税制がありますが、この制度を適用するための要件が現実にそぐわないケースが多いことから要件の撤廃や見直しを求めるほか、技術はあるものの後継者がいない企業がM&Aを活用しやすくするための仲介機能の強化、支援機関や制度の周知などを要望しています。
渡辺委員長から意見を受け取った山下長官は「事業承継は喫緊の課題と捉えているが、事業承継を契機に、中小企業が時代の変化に合わせ、大きく変化できる、という点においても、非常に意義があると考えている。事業承継税制についても、我々も同じ思いをもっているため、ぜひ今後も協力して進めていきたい」と話しています。
取材・文/佐藤真希
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