COLUMNコラム
9割の人が知らない! 「無議決権株式」を活用した事業承継のメリット
事業承継について関心がある経営者なら、種類株式や議決権株式という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
ただ、どういう意味で、どういった使い方があるのかを正確に把握できていない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、使い方によってはメリットが大きい、無議決権株式の活用方法を解説します。
目次
経営者なら知っておきたい「種類株式」の基礎知識
まずは種類株式のメリット・デメリットを押さえよう!
種類株式とは、通常の権利を有する普通株式とは権利の内容が異なる株式のこと。株式を買いたい人(企業)の中には、配当金や優待券を目的とする人もいれば、議決権を目的とする人もいます。
種類株式を発行することで、こうした異なるニーズを満たすことができるため、結果的により多くの資金を調達しやすくなるわけです。そのほか、敵対的買収の防止、株主による会社経営の介入防止、スムーズなM&Aに役立つ、経営をより柔軟に進めやすくなるなど、種類株にはさまざまなメリットがあります。
ただし、種類株式を新たに発行する場合は、まず内容と発行可能総数を定款で定めたうえで株主総会を招集し、特別決議により定款の変更や株式の募集事項などを決定する必要があります。また、自社の利益だけを考えて種類株式を発行してしまうと、投資家にとっては価値の低い株式になりかねません。
逆に、株主の利益を追求しすぎると自社のリスクが大きくなる恐れもあります。したがって、こうしたデメリットも考慮したうえで種類株式の発行を検討する必要があります。
種類株式は9つに分かれる
会社法で認められている種類株式は、次の9つ。発行目的に合わせて、これらを組み合わせることも可能です。
①譲渡制限付株式
②取得請求権付株式
③取得項付株式
④剰余金の配当(配当優先株式)
⑤残余財産の分配付株式
⑥議決権制限付株式
⑦全部取得条項付株式
⑧拒否権付株式
⑨役員選任解任権付株式
この中でも、事業承継において活用されることの多い種類株式は、次の3つです。
④剰余金の配当(配当優先株式)
⑥議決権制限付株式
⑧拒否権付株式
ここからは、⑥議決権制限付株式の中の、無議決権株式に焦点を当てて解説します。
無議決権株式とは
議決権制限株式とは、株主総会での株主の決議への参加を制限する株式のこと。すべての議題に対して議決権を付与しない株式と、一部の議題に対して議決権を付与しない株式の2つに分かれます。そして、前者を「無議決権株式」といいます。
無議決権株式は多くの場合、④剰余金の配当(配当優先株式)とあわせて発行され、配当金を多くもらいたい株主側と、経営に口を出されたくない会社側の利害が一致したときに活用されます。会社法115条により、公開会社における議決権制限株式の発行数は、発行済株式総数の2分の1以下と定められています。しかし、非公開会社には制限が設けられていないため、柔軟な発行が可能です。
無議決権株式を活用した事例
では、実際に無議決権株式を活用することで、事業承継にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。事例を通して見てみましょう。現経営者が自社の発行済み株式100株のすべてを保有しているとして、まず99株を無議決権株式に変更します。
そして、その99株を後継者に贈与などで承継します。すると、現経営者は普通株式を1株、後継者が無議決権株式を99株保有することになります。
この状況で株主総会を行なうと、どうなるでしょうか。基本的に、株式が移転すれば、経営に関する重要事項の決定権限も一緒に移転します。しかし、後継者は無議決権株式しか保有しておらず、議決権がないため、現経営者1人で株主総会の重要事項を決議することが可能です。
このように、無議決権株式を活用することで、後継者は経営者としての経験を積むことに集中でき、現経営者は株主総会で重要事項を決定できます。すなわち、株式の所有と経営を切り離した事業承継が可能になるのです。その他の主な事例としては、配当優先株式と無議決権株式を組み合わせて発行し、従業員持株会に付与すること。これは、従業員のモチベーション向上が期待できます。
まとめ
無議決権株式を活用した事業承継には、さまざまなメリットがあり、現経営者がリーダーシップを取り続けたいときなどに有効です。しかし、あまり現経営者が関与しすぎると、後継者の成長が鈍化する恐れもあります。事前に専門家を交え、方針をすり合わせることをおすすめします。
こちらの記事では、事業承継の流れについても解説しています。ぜひご覧ください。
(「事業承継の流れを7つのステップで解説!」)
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