COLUMNコラム
岸田政権「リスキリングに1兆円」 制度もリニューアル、中小企業が活用するためには
「人への投資」を掲げ、生産性向上を賃上げにつなげたい岸田政権は、リスキリング支援策を拡充している。急速に変化する産業構造への対応や、後継者難などで課題を抱える中小企業への支援が手厚くなっているのが特徴だ。中小企業が活用できるリスキリング支援策を紹介する。
目次
リスキリングは「待ったなし」
リスキリングとは、「リスキル(reskill)」という英語が元にした造語で、技術革新やビジネスモデルの大幅な変化に対応するために、改めて必要な知識やスキルを学ぶことを意味する。経済産業省は、リスキリングを「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義している。
2020年、経産省と厚生労働省は「リスキリング・アップスキリングの推進」を策定し、2022年に岸田政権が「新しい資本主義」を掲げ、リスキリングのための支援制度を新設・拡充するために「今後5年で1兆円を投入する」という考えを表明した。
日本では、少子高齢化による人手不足が引き起こす「2030年問題」があり、待ったなしでリスキリングを進めていくことが求められている。
リスキリングの助成金、中小企業が利用しやすく
中小企業のリスキリング推進のため、厚労省は「人材開発支援助成金」を設けている。企業が、社員に研修を受講させた場合、研修費用や研修中の賃金の一部について、国の助成を受けられる。
複数のコースがあり、
1. 新事業への進出、新商品開発やデジタル化のための研修が対象の「事業展開等リスキリング支援コース」
2. サブスクリプション型の研修サービスに活用できる「人への投資促進コース」
3. リスキリングのための有給休暇制度を創設し、社外研修を想定した「教育訓練休暇等付与コース」
などがある。
人材開発支援助成金は2024年度から制度が改正され、中小企業がより利用しやすくなった点もポイントだ。
具体的には、
1. 制度の対象となる、リスキリングのための休暇取得について、日単位だけでなく時間単位でも可能とした。
2. 中小企業への賃金助成額を1日1人あたり6000円から、同7680円(1日8時間換算)に引き上げた。
3. 中小企業への賃金助成の上限日数を1人あたり150日から、同200日程度へと引き上げた。
といった改正点が挙げられる。
リスキリングや賃上げに取り組む企業に「税の優遇」
企業が社員のリスキリングや賃上げに取り組む場合には、法人税が軽減される「賃上げ促進税制」も活用できる。
この税制は、社員の賃上げを実施した場合の税額控除が主な柱となっているが、中小企業の場合、賃上げに加え、社員の研修費用などが前年度比5%増などの条件を満たせば、税額控除率が10%上乗せされる。
また、中小企業が社員にデジタル関連の研修を実施する際に活用できる「DXリスキリング助成金」(東京都)や、中小企業が社員に「ITパスポート試験」「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」を受験させる際の経費を助成する「中小企業デジタル人材リスキリング促進事業助成金」(金沢市)など、各自治体の助成金も近年充実してきている。
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