COLUMNコラム
あなたの会社は大丈夫? 事業承継における「個人情報」の取り扱いを解説
情報化が進むにつれ、どんな企業であっても個人情報と無縁でいることはできなくなりました。あなたの会社も、顧客や従業員など、多くの人の個人情報を取り扱っているはずです。こうした個人情報は、事業承継の際、どのように扱うべきなのでしょうか。本記事では、事業承継における個人情報の取り扱いについて解説します。
目次
個人情報とは?
まずは個人情報の概要を簡単にまとめます。
個人情報の定義
個人情報の取り扱いに関連する「個人情報保護法」では、「個人情報」を以下のように定義しています。
生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などによって特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それによって特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)、または個人識別符号が含まれるもの。
つまり「生存する個人に関する情報」かつ「特定の個人を識別できる情報」が「個人情報」にあたります。
個人情報保護法を扱う企業の義務
個人情報保護法では、個人情報取扱事業者等の義務や罰則が規定されています。個人情報取扱事業者とは、「個人情報データベース等を事業の用に供している者」のこと。要するに、ビジネスにおいて個人情報を取り扱う企業を指します。個人情報を取り扱う企業の義務には、次のようなものがあります。
・利用目的の明確化、利用目的による制限
個人情報を取り扱う際には、利用目的を明確にしなければならない。また、その利用目的以外で個人情報を利用してはならない。
・適正な取得・利用目的の通知、公表
不正な手段を用いて個人情報を取得してはならない。個人情報を取得した際には、すみやかに利用目的を本人に通知又は公表する。
・正確性の確保
個人情報は正確に保ち、利用の必要がなくなった際にはすみやかに消去するよう努めなければならない。
・第三者に提供する場合の制限
本人の同意を得ずに、第三者に個人情報を提供してはならない。ただし、法令に基づく場合など、一定の条件に合致する場合は同意を得ない第三者提供が可能。
・個人データの提供を行う場合、受ける場合の記録義務
個人情報を第三者に提供する場合や、第三者から提供を受ける場合は、いつ・どのような情報を提供した(された)のかなど、所定の事項を記録し、原則3年間保存する。
・利用目的等の公表・開示、訂正、利用停止
事業者の氏名や名称、苦情の申出先等は、本人にわかる状態で公表する。本人から開示請求された場合には遅滞なく開示しなければならない。また、利用目的の制限や取得の義務に反しているとして、本人から消去又は利用停止を求められた際には、違反を是正し、消去や利用停止を行う。
・苦情の処理
個人情報の取扱いに関する苦情処理に必要な体制を整え、苦情の申し出があった際には、迅速に処理するよう努める。
事業承継と個人情報の基本的な考え方
ここでは、事業承継における個人情報の基本的な考え方を解説します。
事業承継の場合
結論から言うと、事業とともに承継された個人情報の利用は問題ありません。承継前の利用目的の範囲内であれば、個人の権利利益を侵害する可能性は低く、「第三者への提供」に該当しないという解釈です。例外として、あらかじめ本人の同意を得ていれば、利用目的達成に必要な範囲を超えて利用することも可能です。個人情報保護法の16条2項には、以下のように定められています。
個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。
ただし、交渉フェーズにおいては細心の注意を払いましょう。承継や譲渡の契約締結前であっても、確認や調査のために個人データを提供することを求められる可能性があります。その場合は必ず、個人データの取り扱いについて、情報保護のための契約を結んでおきましょう。
吸収合併の場合
この考え方は、吸収合併の場合も同様。合併前の利用目的の範囲内であれば、個人の権利利益を侵害する可能性は低く、「第三者への提供」に該当しないと解釈されます。
買収監査の場合
あなたの会社が、A社に買収される予定だとしましょう。基本合意契約は無事に締結し、最終的な承継契約の締結に向け、買収監査を受ける段階で、あなたの会社が保有している顧客情報を提供するように求められたとします。この場合、顧客本人の同意を得ることなく、A社の求めに応じても問題ないのでしょうか。結論は「問題ない」です。買収監査で顧客データを相手会社に提供することは「第三者への提供」に該当しないと解釈されます。ただしこのケースも、情報保護のための契約を結んでおきましょう。
まとめ
承継前の利用目的の範囲内であれば、事業とともに承継された個人情報の利用は問題ありません。ただし、個人情報は、一度漏洩してしまうと決して取り戻すことができません。問題なく会社を運営していくために、今一度個人情報の取り扱いについて漏れなく確認しておきましょう。迷う点があれば、専門家に相談することをおすすめします。
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