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事業承継税制にマストな「年次報告書」!――適用要件は?

事業承継税制の対象となった企業は、都道府県知事に「年次報告書」を提出しなければなりません。この提出を怠ると相続税・贈与税の猶予が適用外になるとともに、利子税の支払いが発生するなどのデメリットが生じます。本記事では、年次報告書に書くべき内容と提出条件について解説します。

事業承継税制の適用要件まとめ

事業承継税制は、後継者にかかる相続税・贈与税を100%猶予(もしくは免除)する制度です。この制度の適用を受けるには、大きく「会社」「先代経営者」「後継者」「その他」に分けられた各種要件を満たさなくてはなりません。

「会社」の要件

・承継法上の中小企業であること
・非上場会社であること
・資産管理法人ではないこと(一定の条件を除く)
・医療法人や風俗営業会社に該当しないこと
・1人以上の従業員がいること
・収入がゼロではないこと

「先代経営者」の要件(すべて該当する必要あり)

・会社の代表権を有していたこと
・承継の直前において、一族で50%超の議決権を有していたこと
・承継の直前において、一族の中で(後継者を除く)筆頭株主であったこと
・(贈与の場合は)承継の直前において、代表を退任していること

「後継者」の要件(すべて該当する必要あり)

【相続・贈与に共通】
・会社の代表者であること
・後継者一族において、50%を超える議決権を保有していること
・後継者一族において、筆頭株主になること(後継者が2人または3人の場合、総議決権数の10%以上を有することなど)

【相続で承継する場合】
・相続の翌日から5カ月を経過する日において、会社の代表者であること
・相続の直前に会社の役員を務めていたこと(被相続人が70歳未満で死亡した場合などを除く)

【贈与で承継する場合】※いずれも贈与時点が基準
・20歳以上であること(令和4年4月1日以降の贈与では18歳以上)
・役員就任から3年以上経過していること

「その他」の要件

・納税猶予を受ける税額および利子税額に見合う担保を税務署に提供すること
・会社、後継者、先代経営者が適用要件を満たしていることについて、一定期間内に申請し、都道府県知事からの認定を受けること

上記の要件を満たして事業承継税制に適用を受けられたとしても、相続税・贈与税の納税義務が猶予されるには、以下の要件を5年間該当し続けなければなりません。

・後継者が会社の代表権を保有していること
・後継者が非上場株式を保有していること
・雇用の平均が贈与時(または相続開始時)の80%を下回らないこと
・資産管理会社に該当しないこと 
・都道府県と税務署に対して会社の状況を報告し続けること

年次報告書とは

前項で取り上げた「その他の要件」の1つが、本記事のテーマである「年次報告書」です。年次報告書とは、事業承継税制の対象となる企業の経営状況等について、都道府県知事に提出しなければならない書類のこと。都道府県知事の確認を受けた上で、管轄税務署に継続届出書を提出する際に、所年次報告書の写しを添付する必要があります(経営承継期間中は1年ごと、その後は3年ごと。以降3年ごとは継続届出書のみ)。

年次報告書は、法令上、事業承継税制の適用にかかる贈与税または相続税の申告期限の翌日から1年を経過するごとの日(これを「報告基準日」といいます)における対象会社の経営状況等を記載する必要があります。年次報告書の作成例は以下から確認できます。添付書類もまとめられているので、提出前に確認しておくとよいでしょう。

年次報告書の作成例:http://www.pref.nara.jp/secure/178403/sinseidobansakuseirei.pdf

報告基準日に誤りがあった場合、どうなる?

災害に見舞われたり、 病気にかかったりして、贈与税または相続税の申告期限が延長されているにもかかわらず、延長前の申告期限を基にした報告基準日に基づく年次報告書を作成・提出している場合、報告基準日における対象会社の経営状況等について確認することができません。

そのため、延長前の申告期限を基にした報告基準日に基づいて年次報告書を提出している場合、改めて延長「後」の申告期限を基にした報告基準日に基づく年次報告書を再度作成の上、都道府県知事に再提出しなければなりません。再提出した年次報告書は、改めて確認を受けることになります。また、所轄税務署にも継続届出書とともに既に提出済みの場合には、上記により再提出した年次報告書の写しを所轄税務署にも提出する必要があります(ただし、既に提出している継続届出書の再提出は不要です)。

年次報告書を提出する際には、事業承継税制の適用にかかる贈与税または相続税の申告期限が延長されていないか確認し、延長後の贈与税または相続税の申告期限を基にした報告基準日に基づいて作成・提出してください。

まとめ

事業承継税制の適用条件として都道府県知事に毎年提出しなければならない「年次報告書」。実際には顧問税理士が記載するケースがほとんどですが、1回でも提出を忘れると制度の適用外になってしまいますので注意してください。顧問税理士に依頼する場合も、依頼主である会社側が提出を忘れないようリマインドするのが理想的といえるでしょう。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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