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事業承継信託とは?メリットとデメリット、使い方を解説!

事業承継信託は比較的新しい制度のため、その概要についてご存知ない方が多いと思います。 しかし、事業承継信託はかしこく活用することで、スムーズに後継者に事業承継ができるので、知っておいて損はないでしょう。そこで本記事では、事業承継における信託のメリット・デメリットについて解説します。

事業承継信託とは?

事業承継信託とは、事業承継を後継者に円滑に行う方法の一つであり、「自社株信託」とも呼ばれます。事業承継信託は、企業の経営者がケガや病気、死亡、認知機能の低下など、もしものことが起こった際に備えて行います。

信託とは?

信託とは、信頼できる人に資産を預けて運用してもらうことを指します。
信託においては、受託者・委託者・受益者がいますが、多くの場合、委託者と受益者は同じ人物です。

受託者:委託者から信託され、資産を管理・運用する人
委託者:受託者に資産を信託する人
受益者:信託された財産から発生する利益を受け取る人

信託における事業承継信託とは?

事業承継信託において信託されるのは、会社の株式です。つまり事業承継信託とは、現経営者が金融機関に会社の株式を信託し、ある条件にしたがって後継者に株式を受け渡すことです。株式を一定の割合以上保有すると経営権が発生するので、事業承継信託を行うことは、実質後継者に経営を任せるということになります。

事業承継信託の種類

事業承継信託には以下の3つの種類があり、それぞれ解説します。

①遺言代用信託
②他益信託
③受益者連続信託

①遺言代用信託
遺言代用信託は、信託銀行や信託会社に信託する方法です。受益者である現経営者が亡くなった後に、後継者が受益者となります。現経営者が生存しているうちに、亡くなった後の財産分与についての契約を結ぶことができるため、現経営者の意思を反映させ、後継者は確実に経営権を獲得できます。

②他益信託
他益信託は、現経営者が経営権を持ち続けたまま、後継者が受益者となる方法です。遺言代用信託と同じように、受託者は信託銀行や信託会社です。現経営者は、相続発生時、信託設定から数年経過時など信託終了の時期について決定することができます。

③受益者連続信託
受益者連続信託は、現経営者が自社の株式を信託し、後継者を受益者と決定する方法です。しかし、後継者が死亡してしまった場合は、次の後継者へ受益権を渡すことができます。このように事前に後継者となる順番を指定できるので、スムーズに事業承継を行うことが可能です。

事業承継信託のメリット・デメリット

事業承継信託のメリット

事業承継信託のメリットは、以下の5つが挙げられます。

①現経営者の意思や理想に沿った事業承継ができる
②後継者トラブルを防いで後継者の地位を確立できる
③経営の空白期間が発生しない
④税金がかからない場合もあるため節税になる
⑤契約後に白紙にすることができる

事業承継信託は、現経営者が後継者および事業承継される条件などをあらかじめ決定し、指定した通りに進まなければ契約をやり直すことができます。そのため後継者をめぐるトラブルを未然に防ぐことができ、経営者がいないなどの事態が発生しません。また事業承継信託は課税されない場合もあるので、後継者の負担が軽減されます。

事業承継信託のデメリット

事業承継信託のデメリットは、以下の3つが挙げられます。

①遺留分減殺請求をされたときの対処が決まっていない
②現経営者の死亡が前提となっている
③信託制度について普及されていないため理解されにくい

遺留分減殺請求とは、特定の相続人にだけ有利な遺産配分がされたときに、ほかの相続人が最低限の遺産の取り分を請求できる制度です。事業承継信託においては、後継者以外の相続人が遺留分減殺請求を行うことができますが、その際にどのような対応を取るべきかは専門家の間でも意見が分かれています。

また、事業承継信託は現経営者が死亡したときに事業承継をすることが前提となっているので、生前に事業承継を行いたい場合は、譲渡や贈与を検討する必要があります。さらに事業承継信託は平成19年に信託法が改正されてできたものなので、まだ周りからの理解を得ることは難しいかもしれません。

事業承継信託を設定する方法は?

事業承継信託を設定する方法は以下の3つの方法があります。

①前もって信託契約を締結する
②遺言書に事業承継信託について記載しておく
③自己信託によって宣言する

①の信託契約を締結する方法は、信託者である現経営者と受託者である信託銀行や信託会社との間で契約が結ばれます。受益者である後継者は契約の場に居合わせず、利益を一方的に受け取るのみになります。

②の遺言書に記載しておく方法は、現経営者が死亡したと同時に遺言書の効力が発生します。

③の自己信託によって宣言する方法は、現経営者が委託者と受託者を兼ねるため、信託契約を結ぶことができません。

事業承継信託を使うときの注意点

事業承継信託を使う際は以下の4つに注意しましょう。

①周囲からの理解を得る
②後継者以外の遺留分を配慮する
③自社株式を信託する場合は税制上の優遇を受けられない
④相続税の課税対象になる可能性もある

信託開始時に委託者と受益者が同一、相続後に後継者と受益者が同一となる場合はみなし相続財産となり、相続税が発生するため注意が必要です。

まとめ

本記事では、事業承継信託の概要からメリット・デメリットまで解説しました。
事業承継信託は、現経営者の死後に事業承継をしたい、事業承継税制の活用を考えていないという方にはぴったりの事業承継の方法の一つです。

経営者の意思を反映でき、後継者の立場が守られる一方で、まだまだ認知度は低く、遺留分について相続人とトラブルが発生する可能性があるなどのデメリットも考慮しておかなければいけません。

過去記事では、事業承継のほかの方法である自社株の売却についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
(「自社株を売却するメリットやデメリット、注意点をまとめて解説!」)

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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