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保険の活用で無理なく「第三者承継」を可能にした成功事例

「日本企業の99%を占める中小企業の事業承継を進めることが、日本再生のカギである」
――このように語るのは、資本金850 億円、営業所・支店数は300 を超えるアクサ生命保険の代表取締役社長兼CEO、安渕聖司氏。さらに安渕氏は、2023年12月23日に放送された「第21回 賢者の選択サクセッション」にて、「事業承継の必要性はますます高まっているが、大きな課題に直面するケースも少なくない」と事業承継の難しさについて述べています。本記事では、アクサ生命保険が行なった事業承継の成功例から、事業を子どもや孫に引き継げない「第三者承継」の事例をご紹介します。

「誰かに継ぎたい」と「家族へ遺産を残したい」の板挟み

「第三者承継」とは、後継者のいない事業を継続させるために、事業主の親族や従業員以外の相手に、事業を引き継いでもらうという方法です。しかし相続権のない後継者では、株をどう移転するかが問題となります。

とある製造業の会社では、創業社長が高齢になり、息子が2人いましたがいずれも別の事業を営んでいて、会社を継ぐ意思はありませんでした。

後継者になりうるのは、妻の甥にあたる専務の男性ですが、相続権はありません。この企業の自社株の評価額は1億円でしたが、妻の甥は個人資産が乏しく、社長が100%持つ自社株を買い取ることができませんでした。

その一方で、社長も創業者として「家族のために財産を遺したい」という思いがありました。

保険を活用して第三者承継を実現

息子2人は会社を継ぐ意思がない。頼みの綱は妻の甥だが、相続権がなく、自社株を買い取るだけの資金はない。それに、家族にも資産を遺したい――創業者である社長は大いに困っていました。

そこでアクサ生命が提案したのは、次のような方法です。

まず、妻の甥の給与を増額し、その分で満期保険金のある保険に入ってもらいます。次に、妻の甥を被保険者として、満期保険金のある保険に法人契約で加入します。そして副社長である妻を被保険者にしました。この保険もやはり法人契約で加入します。

この3つの保険が第三者承継のポイントとなります。

第三者が会社経営をコントロールできる状態で承継

そして創業社長は代表権を甥に譲りますが、相談役として会社には残ります。そして妻の甥は、個人契約した満期保険金を活用し、社長から自社株を20%だけ買い取ります。

創業者が亡くなった際、所有する残り80%の株は、妻と息子2人が相続します。会社はそこで、妻の甥を被保険者にした法人契約の保険を解約します。

つまり、会社が払戻金を活用して妻が相続した40%の株を買い取ることで、妻は老後のまとまった資金を得られるわけです。

妻が亡くなった際、会社は死亡保険金を受け取ります。この死亡保険金で、息子2人が持つ株20%ずつを会社が買い取ります。これによって遺産相続分も含め、息子たちにもきちんと譲渡代金が入るという仕組みになります。つまり最終的な株主構成は、甥が20%、会社が80%です。

実は、法人が所有する自己株は一般に「金庫株」といわれ、議決権がありません。そのためこの方法によって、20%を所有する甥が100%の議決権を持ち、会社経営をコントロールすることが可能になるのです。

まとめ

本記事では、3つの保険を活用することで第三者承継を成功させることができましたが、保険のプロフェッショナルだからこそ実現できたスキームといえます。 過去記事では、さまざまな事業承継にまつわる問題と解決方法について解説しているので、ぜひご覧ください。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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