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「事業承継税制」とは? まつわる要件について解説

事業承継をする際には、いくつかの税金が関わります。場合によっては多額の税金がかかる可能性もあり、頭を悩ませることもあるでしょう。その際に味方となるのが「事業承継税制」です。この記事では、事業承継税制について詳しく解説します。

事業承継にかかる税金

相続税

オーナーが亡くなった会社を親族が承継する場合、相続税がかかります。相続税は累進課税であるため、相続時の取得金額が大きいほど、課税額も大きくなります。税率は1,000万円以下の場合が10%、6億円を超える場合は最大の55%です。

贈与税

贈与人から受けた資産には、贈与税が課されます。事業承継の場合は会社を贈与されるため、贈与税がかかるのです。贈与税は、所得に応じて段階的に課税されます。具体的には、贈与額が200万円以下の場合は税率が10%、3,000万円を超える場合には55%となります。相続税よりも高い税率が適用される点に留意が必要です。

登録免許税・不動産取得税

事業承継では不動産の所有権移転に際しても税金がかかります。土地や建物を購入し、所有権を登記するときに納めるものが登録免許税です。承継される物の中に不動産がある場合は登記申請が必要となり、登録免許税を納める必要があります。課税額は固定資産評価額の2%です。

不動産取得税は土地や建物を購入したり、建物を建築したりしたときにかかる税金です。生前贈与の場合にのみかかるため、オーナー経営者が亡くなって相続した場合などは支払う必要がありません。課税額は不動産の価格に税率をかけて求めます。税率は原則4%ですが、2024年3月31日までは軽減措置が行われており、土地や住宅に関しては3%です。会社は住宅には該当しないため、基本は4%の計算で求められます。

なお、通常の事業承継では消費税や法人税はかかりません。

中小企業の味方「事業承継税制」について

会社の要件

事業承継税制は中小企業の事業承継に際し、相続税や贈与税の負担を猶予・免除してくれる制度です。事業承継を推進するために打ち出された施策ですが、制度を受けるためには様々な要件をクリアしなければなりません。

その一つである「会社の要件」については、以下の事項を満たしている必要があります。

・承継法上の中小企業であること
・非上場会社であること
・資産管理法人ではないこと(一定の条件を除く)
・医療法人や風俗営業会社に該当しないこと
・1人以上の従業員がいること
・収入がゼロではないこと

なお中小企業は、法人税法における基準では「資本金が1億円以下であること」を指し、中小企業基本法においては資本金か従業員数が定義を下回った場合を指します。中小企業の枠を外れてしまうと制度を受けられないため、注意が必要です。

経営者(人)の要件

人の要件に関しては、先代経営者と後継者の双方に要件があります。まず先代経営者に対しては、以下の項目に当てはまっていることが必要です。

会社の代表権を有していたこと
承継の直前において、一族で50%超の議決権を有していたこと
承継の直前において、一族の中で(後継者を除く)筆頭株主であったこと
(贈与の場合は)承継の直前において、代表を退任していること

また、後継者の要件は相続と贈与で要件が異なります。「会社の代表者であること」と「後継者一族において50%の議決権を保有しており、筆頭株主でもあること」は、承継の方法が相続・贈与に関わらず必要な事項です。

さらに相続である場合、「相続の翌日から5か月経過した後も会社の代表者であること」と「相続の直前まで会社の役員を務めていたこと」という要件が必要になります。一方、贈与である場合は後継者が「18歳以上で成人していること」と「役員就任から3年以上経過していること」が必要です。

適用後5年間の要件

事業承継税制は適用されて終わりとなるわけではありません。その後5年間も要件を満たす必要があります。満たすべき要件は以下のとおりです。

・後継者が会社の代表権を保有していること
・後継者が非上場株式を保有していること
・雇用の平均が贈与時(または相続開始時)の80%を下回らないこと
・資産管理会社に該当しないこと
・都道府県と税務署に対して会社の状況を報告し続けること

なお、次の要件を一つでも満たした場合、税金の納付が全額免除されます。

・後継者(受贈者)または経営者(贈与者)が死亡
・後継者(相続人)が死亡
・破産手続開始決定、もしくは特別清算開始の命令等を受けた
・後継者が、次の後継者に対して事業承継税制の適用を受ける贈与をした

その他の要件

このほか、以下の2つの要件を満たす必要があります。

・納税猶予を受ける税額および利子税額に見合う担保を税務署に提供すること
・会社、後継者、先代経営者が適用要件を満たしていることについて、一定期間内に申請し、都道府県知事からの認定を受けること

まとめ

中小企業が多額の納税に悩む場合、事業承継税制は事業承継をスムーズに行うための味方となります。ただし、制度を活用するためには多くの要件を満たす必要があり、全額免除を受けるには特定の条件を満たさなければなりません。要件を詳しく確認してから、事業承継税制を活用し、円滑な事業承継を実現しましょう。

事業承継に関するさらなる情報は、以下の記事でご一読いただけます。
(「事業承継の流れを7つのステップで解説!」)
https://kenja-succession.com/articles/innovation/business-succession-flow/

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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