COLUMNコラム

TOP 経営戦略 譲渡制限株式を譲渡する際に必要な「株式譲渡承認請求書」 その必要性や手続きの流れを解説
S経営戦略

譲渡制限株式を譲渡する際に必要な「株式譲渡承認請求書」 その必要性や手続きの流れを解説

事業承継の一つである株式譲渡には、株主総会や取締役会などの承認を得ることを必要とする「譲渡制限」が設けられることがあります。その際に必要なものが「株式譲渡承認請求書」です。本記事では、株式譲渡を考えている人向けに、株式譲渡承認請求書の記載項目、必要性、手続きの流れについて解説します。

株式譲渡承認請求書において不可欠な記載項目はたったの2つ

株式は、会社法によって自由に譲渡できることが定められています。しかし、会社にとって望ましくない人が会社の経営権を掌握すると、会社の経営が上手くいかなくなる可能性もあります。そういったことを防ぐために、株式の譲渡において会社の承認が必要となることを定めることができます。この株式を「譲渡制限株式」といいます。

株式譲渡承認請求書とは、このように株主が第三者に株式を譲渡する際、株式を発行している会社に株式譲渡を承認してもらうための書類です。

株式譲渡承認請求書を作成する上で必要な記載事項は、以下の2つです。

・譲渡する株式の種類と数
・譲受側の氏名と住所

譲渡する株式の種類と数

株式には、普通株式、優先株式、劣後株式などの種類があり、日本では主に普通株式が使われています。優先株式は配当や残余財産の分配などにおいて普通株式より優先順位が高くなる株式であり、劣後株式は逆に優先順位が低くなる株式です。株式譲渡の契約書を確認して、株式の種類と数を間違えないように注意して記載しましょう。

譲受側の氏名と住所

譲渡する相手の氏名と住所を記載します。こちらも誤りのないように気をつけましょう。

押印の際に認印ではなく実印が求められる場合がある

株式譲渡承認請求書には押印欄が設けられています。基本的には認印で問題ありませんが、実印を求められる場合もあります。実印は印鑑証明書とセットで効力を発揮するもので、本人が押したという証明になります。認印も同じ法的効力を持ちますが、自分が押していない、自分の印鑑ではないと主張された場合に立証するのが困難です。
また、実印を求められても拒否することはできますが、実印を押さなかったためにトラブルが発生する可能性もあるので、特別な事情がない限りは実印を押すことをおすすめします。

株式譲渡承認請求書の必要性とは? 提出は必須ではない

株式譲渡承認請求書は、譲渡制限株式を譲渡したい場合に会社に送付します。しかし、法律上では書面で請求する必要はありません。
ただし、株式譲渡承認請求書を利用しなければ、不承認だった場合の対応を記載できない、株式譲渡承認請求をした証明ができないなどといった不都合が生じるので、書面を用いるほうが良いと言えます。

株式譲渡承認請求書を提出した後の手続きの流れ

譲渡の承認または不承認の決議・通知

株式譲渡承認請求を受けて、取締役会の決議によって譲渡を承認するか否かを決定します。ただし、取締役会が非設置の会社は株主総会の普通決議で行います。
また、会社でこれとは異なる定款を定めることができ、取締役会が設置されている会社でも承認機関を株主総会や代表取締役にすることが可能です。
なお、譲渡の承認または不承認の決定後から2週間以内に株主に結果を通知します。

承認の場合:株主名簿の書換を行って譲渡完了

2週間以内に結果が通知されなかった場合は、不承認とする決議を行っていたとしても承認したという扱いになります。
このように譲渡が承認されると、株式譲渡が実行され、株主名簿の書き換えを行います。
株式譲渡契約が締結すれば株式を譲渡することはできますが、譲受人が会社に対して株主としての権利を主張するには、株主名簿に譲受人の氏名が記載されていなければいけないからです。

不承認の場合:会社または指定買取人による株式の買い取りを請求する

株式譲渡が不承認となってしまった場合は、会社もしくは指定買取人が株式を買い取ります。
会社が自ら買い取る場合は自己株式を取得したことになるので、分配可能額における制限を受けます。また、株式譲渡請求を否認してから40日以内に、株主総会の特別決議で対象株式を買い取る旨および株式の種類や数を決議し、その内容が記載された書面を交付する必要があります。

一方、会社が指定買取人を指定する場合は、取締役会の決議または株主総会の特別決議を行います。そして指定された本人が、株式譲渡請求を否認してから10日以内に株式を買い取る旨を株主に通知します。

まとめ

中小企業の多くは譲渡制限株式を発行しています。したがって、株式譲渡承認請求書の記載方法や必要性を理解しておくことが重要です。また、不承認時の対応を記載したり、実印で押印したりといった注意点も頭に入れておきましょう。
過去記事では、株式譲渡のメリット・デメリットについても解説しているので、ぜひご参照ください。
「後継者のいない会社におすすめの株式譲渡 概要からメリット・デメリットまでを解説」

FacebookTwitterLine

賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

記事一覧ページへ戻る