COLUMNコラム
社長が急に死亡した場合、事業承継はどう進めればいいか?
高齢になるほど確率が上がる「突然死」。事業承継を考えていた矢先、先代経営者が亡くなった場合、家族や後継者はどのような対応・手続きをとるべきなのでしょうか。中小企業の場合、経営者の影響力や求心力は強いものです。正しい対応をとらなければ、短期間で会社の業績が傾く恐れもあります。本記事では、経営者が突然死亡した際の対応やその後の事業継続のために行うべき確認事項について解説します。
目次
何も準備をしないまま社長が急逝したらどうなる?
事業承継や業務の引き継ぎを準備していれば、経営者が突然死しても大きな支障は出ず、会社運営を続けられるかもしれません。しかし、何も準備をしないまま急に経営者が亡くなった場合、次のような事態が起こる可能性があります。
取引先の信用度が落ちる
企業は小さければ小さいほど経営者の影響力は強くなるのが一般的です。そうした中小企業の場合、経営者しか知らない情報(知識やノウハウ含む)もあることが珍しくなく、突然死によってすべての業務がストップしてしまうリスクがあります。急な引き継ぎに慌てて対応していると、取引先と取り決めていた納期に間に合わなかったり、支払いが滞ったりしてしまい、会社としての信用度が落ちるかもしれません。
後継者選びで揉めてしまう
後継者候補をまったく決めていないまま経営者が急逝すると、「誰が次期社長になるか」で揉めて経営者不在の時期ができることも。この時期が長引くほど、従業員は不安を感じますし、良くない噂が立って取引を控える会社が出てくる恐れもあります。
相続人が廃業や事業売却を選んでしまう
中小企業の場合、経営者が大半の株式を持っていることが多いですが、相続発生時に遺言がない場合、相続財産は「相続人」に分配されるのが原則です。相続人とは、配偶者と血族(血のつながりのあった人)を指します。血族の中でも優先順位があり、「被相続人に近しい人」が先の順位となります。
第1順位:直系卑属(子や孫、ひ孫など)
第2順位:直系尊属(父母や祖父母、曾祖父母など)
第3順位:兄弟姉妹(亡くなっている場合には甥姪)
このため、遺言を残しておかないと、会社経営に興味がない、あるいはそれまで事業に関わっていなかった相続人が株式を相続し、事業価値を正しく判断できないまま廃業や事業売却を選んでしまう恐れがあります。
まずすべきなのは「各所への連絡対応」
経営者が突然亡くなったら、家族や取締役、役員は大きな悲しみや不安を抱くと思いますが、会社運営は継続していかなければなりません。真っ先にすべきなのは、従業員、クライアント、仕入れ先、外注先、取引している金融機関などへの連絡です。
従業員に関しては、業務に直接支障が出た結果、前項で解説したような会社の信頼度低下につながる恐れもあるので、亡くなった経営者の業務を一刻も早く把握し、必要に応じて財務・経理の代行者を速やかに決めましょう。外部に関しては、社葬を行う場合、通知すべき企業のリストアップも行う必要があります。
新しい経営体制を構築する
経営者が持つ株式などの財産については通常の相続ルールが適用されますが、会社の代表権も相続の対象外となります。つまり、相続人であっても無条件に社長に就任することはできず、定款に則って新たな代表者を決める必要があるのです。
次期社長を決める方法は、「株主総会での決議」「取締役会での決議」「取締役同士の話し合い」など会社によって異なります。新社長が決まったら、すべて新社長の名義に変更しましょう。社会保険関係の届出は5日以内となっているので注意してください。また、新しい社長が決まったら、社内への告知はもちろんのこと、外部の関係先にも早急に報告しましょう。
突然死のリスクを考え、経営者は遺言書を用意しよう
もし親族外(役員・従業員)承継をしたい場合は、「自社株については後継者がすべて相続し、その他の財産は他の相続人が相続する」といった遺言書をあらかじめ残しておきましょう。こうすることで遺産分割協議を回避でき、後継者に自社株を集中的に引き継がせることができます。
ただし、各相続人には最低限の相続分である「遺留分」が認められているため、先代経営者が考える相続内容を遺言ですべて自由に決めることはできません。注意してください。なお、遺留分を侵害している、あるいは遺留分を侵害していないけれど相続人の間で不公平がある場合、後継者から他の相続人に対して代償金を支払えば解決するケースが大半です。
事業承継における遺言の重要性、種類と作成方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
(「事業承継で絶対に欠かせない「遺言」の活用術」)
まとめ
会社を支えてきた経営者が急に亡くなったら、多大な不安や悲しみを抱くものです。とくに、相続や手続きが重なる親族は、精神的にも肉体的にも負担が重くのしかかるはずです。とはいえ、会社の財務状況の把握、金融機関などへの対応、従業員や顧客への速やかな周知など、早急にやるべきことは数多くあります。なかには複雑な処理や手続きが必要なものもありますので、まずは専門家に相談するのがよいでしょう。
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