COLUMNコラム
事業譲渡において転籍を拒否したらどうなる? 影響やトラブルを回避する方法を解説
会社の事業を現経営者から後継者に引き継ぐ事業承継とは異なり、事業譲渡は会社の事業の一部またはすべてを他の企業に譲渡します。事業譲渡で譲渡するのは、会社の設備や施設、権利だけでなく従業員も含まれる場合があるので、従業員にとっても重要な分岐点です。事業譲渡に関わる人向けに、事業譲渡の際に転籍を拒否した場合の影響、トラブルを避けるためにはどうすればいいか解説します。
目次
譲渡企業・譲受企業にとって最も望ましい転籍!従業員の同意が必要
事業譲渡において転籍させる場合は新たに雇用契約を結ぶ必要がある
事業譲渡の際、事業やノウハウの継承のために、譲渡企業で就労する従業員の中には譲受企業への転籍を命じられる人もいます。しかし、従業員は譲渡企業と雇用契約を結んでいても、譲受企業とは未契約の状態にあるため、転籍するにあたって譲受企業との間に新たな雇用契約を締結させる必要があります。
転籍を拒否しても譲渡企業は解雇できない
事業譲渡に伴い、譲受企業への転籍を拒否する従業員に対して、譲渡企業は簡単に解雇を言い渡すことはできません。少なくとも、互いが納得する結果となるようなプロセスを踏むことが重要になります。
解雇する場合は整理解雇の4つの要件を満たさなければいけない
事業譲渡により、従業員の解雇がやむを得ない場合、解雇権の濫用や退職強要と見なされることを防ぐために、以下4つの項目に注意する必要があります。
①経営上の問題として、解雇せざるを得ない状況にある
②出向や配置転換など、解雇以外の他の代替策の提案を試みた
③合理的かつ公平に解雇対象となる従業員の選定を行った
④整理解雇が必要となる理由とその内容について従業員側と十分に協議を行った
転籍を拒否した場合の影響は? 退職を強要される可能性も
転籍の場合、雇用主が変わることで、それまでの勤務形態や賃金などの労働条件にも変更が生じる可能性があり、従業員への影響が大きいために、同意できないと感じられれば拒否することが可能です。しかし、拒否したことにより、退職強要と判断されるような不当な扱いを受ける事例も、現実では一部の企業の間で起きているようです。従業員には転籍を拒否する権利があることは事実ですが、拒否したあとの社内での風当たりを気にして、自分にとってはメリットがなくても、拒否できない状況に置かれてしまっている人もいるというのが現状です。
従業員とのトラブルを避けるためには
転籍により、急な職場の移動や業務の変更に不安を感じる従業員がいることは無理もありません。しかし、転籍は悪いことばかりではなく、今までよりも給料が上がったり、自分の希望する働き方で勤務できたりする場合もあります。このような利点も考慮しつつ、以下では従業員とのトラブルを回避する方法を3つご紹介します。
①丁寧に説明してフォローする
事業譲渡後の従業員の待遇はそれぞれですが、譲渡企業に残る人と転籍する人との間で、不満や格差を感じる従業員も決して少なくはないでしょう。譲渡企業側は、従業員のこのような気持ちに十分配慮し、丁寧な説明やフォローを心がけるようにしましょう
②事業譲渡の発表を適切なタイミングで行う
比較的長期スケジュールになりやすく、最終締結までに時間を要する事業譲渡では、従業員に知らせるタイミングも重要になってきます。あまり早くに発表してしまうと、社内に動揺が広がり、業務に支障をきたす恐れがあるため、最終締結後、あるいは引っ越しや支払いの手続きがすべて完了したあとでの発表が好ましいでしょう。
③出向や配置転換を検討する
転籍を拒否された場合には、出向や配置転換などを提案することも、トラブルを避ける方法の一つです。出向の場合、譲渡企業との雇用契約を保持したまま、譲受企業への出向という形になるため、雇用契約の結び直しに不満を抱いている従業員にとっては最適な提案と言えるでしょう。
まとめ
事業譲渡は事業承継とは異なるもので、それぞれメリット・デメリットがあります。経営者同士で進められることではないからこそ、従業員一人一人の意見や気持ちに向き合う必要があるということを、事業譲渡を考えている人は念頭に置いておかなければなりません。
今回は事業譲渡の転籍におけるトラブルをご紹介しましたが、事業承継においても相続や後継者問題が関わることで、トラブルに発展する可能性があります。過去記事では、事業承継で起こりやすいトラブルと、その解決方法について解説しているので、ぜひご参照ください。
(「事業承継でもめる要因は?トラブルパターンと解決方法を紹介」)
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