COLUMNコラム
「現時点のイメージで作るロゴマークは、既に古い」 会社ロゴマークが果たす役割とは、長野五輪エムブレムのデザイナーに聞く
「会社の顔」の一つにロゴマークがあります。「三菱」や「マクドナルド」「ナイキ」などは誰もが知っているでしょう。どのマークも、会社の理念や哲学、将来像が凝縮され、ずっと変わらないようにみえても実は時代毎に変化し続けています。長野冬季五輪のエムブレムなど、日米で多くのロゴマークを手がけてきたデザイン会社「イデアクレント」(東京都中央区)の篠塚正典代表取締役に、ロゴマークが果たす役割について聞きました。
目次
一目で分かるデザインの力
――日米で長い間、デザインの仕事をされてきました。思い出深いデザインとしてはどんなものがありますか。
篠塚 1998年の長野冬季オリンピックで採用されたエンブレムのデザインが一番です。
他では、東芝のノートパソコン「ダイナブック」のロゴマークです。決定まで時間がかかり、200案以上を提案しました。難航しましたが、東芝のプロジェクトリーダーと粘り強く話し合い、今のマークがようやく生まれたのです。
それまではシャープなシンボルマークが得意だったのですが、四角いデザインに二つの小さな○がポンポンと並ぶ、女性にも受けそうなマークが出来上がりました。新境地が開けたプロジェクトでした。
会社の20年後をイメージしてデザイン
――会社をイメージできるロゴマークを作るには、会社が目指すべきものを掴む必要がありますね。
篠塚 重要なのは、会社の理念、フィロソフィー、ビジョンなどを整理して、確認することです。ブランディングは、単にビジュアルのマークをつくることが目的ではありません。
デザインする時は、社長をはじめ主要な役員の方々にインタビューし、新しい事業にどう取り組むか、過去はどんな事業をしてきたか、現在はどうなっているかを聞き、約20年後を想像して、デザインします。現時点のイメージをデザインすると明日には古くなってしまいますので。
社員がブランディングの意味を分からないと失敗する
――会社にとってブランディングとは何でしょうか。
篠塚 一言で言えば顔です。顔は大事です。私たちは顔から人の多くの印象、イメージを受け取ります。会社の顔と言えるもシンボルマークは印象のいいもの、なるべく明るく元気なものをつくろうと考えています。
良いマークは誰が見ても「この会社はこんなことをやっている会社だな」とすぐに伝わるマークです。顔がすべてを語りかけるようにマークがすべてを伝えてくれます。
すべてを単純な形の中にどう表すかがシンボルマークデザインの難しいところです。
――ブランディングは会社の外に向かってやるものですか。
篠塚 もちろん外へのメッセージにもなりますが、社員に向けてどう発信するかを考えなければいけないと思っています。まず先に全社員に分かってもらい、次に外向きに発信することが大切です。
ブランディングが失敗するのは、外向けに格好をつけるだけで、社員に向けて考えていないケースがほとんどです。
※こちらの記事は追記・修正をし、2024年4月5日に再度公開しました。
(文・構成/安井孝之)
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