COLUMNコラム
大企業による新規事業の特徴は? 実際の成功事例も紹介
大企業においては、豊富な経営資源(ヒト・モノ・カネ)を活用し、新規事業を立ち上げるケースが増えてきました。しかし、大手企業であったとしても、新規事業にはさまざまな困難を伴うため失敗するケースは少なくありません。
本記事では、大企業における新規事業の特徴や、実際の成功事例を紹介します。
目次
大企業が新規事業を進めるには
大企業が新規事業の立ち上げに成功すれば、企業のさらなる成長が期待できます。しかし、新規事業の立ち上げには、課題が伴うものです。ここで紹介するポイントを押さえて新規事業の成功につなげましょう。
新規事業への挑戦が必要な理由
事業は「導入期・成長期・成熟期・衰退期」と変化していくため、どんな事業でもいずれは衰退期に入ります。近年、技術の急速な発展や市場の成熟化によって顧客や市場のニーズの変化がめまぐるしく、商品やサービスの寿命が短期化しているのが現状です。
その中で、既存事業のみでビジネスを行っている場合、国際紛争や気候変動など予想外の事態が生じた際に収益低下などの大きなリスクを伴います。このリスクを軽減させるために、新規事業という異なる柱を立てる必要があるのです。
大企業の新規事業が失敗する原因
中小企業やスタートアップ企業(新たなビジネスモデルを創出する企業)に比べ、人材や資金が潤沢な大企業であっても、新規事業の立ち上げに失敗することもあります。
考えられる原因は以下の通りです。
(1)ビジョンが明確ではない
新規事業の目指すべきビジョンが明確ではないと、社員はモチベーションが保てず、失敗に終わる恐れがあります。
(2)新規事業を推進する人材がいない
新規事業立ち上げにおいては、ITやマーケティングといった技術面に加え、組織のプロジェクトを成功に導くマネジメント能力が必要です。そのため、社員数の多い大企業であっても、新規事業に必要な技術や経験を持った社員がいなければ新規事業の成功は見込めません。
(3)事前準備が不足している
社内にどんなに優れた人材や技術があったとしても、新規事業の立ち上げではシステムの不具合など、さまざまなトラブルが発生するでしょう。こうしたリスクに備えた準備がないと、対応できずに新規事業に失敗するリスクが高まります。
(4)スピーディーな対応ができない
複数の承認が必要となる大企業の性質上、対応が遅くなるケースは少なくありません。そのため、新規事業においても判断の適切なタイミングを逃してしまい、失敗となる恐れがあります。
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新規事業を立ち上げる際に陥りやすい問題点
新規事業を立ち上げる際は、以下のような問題に陥りやすいため、注意しましょう。
(1)担当者に自発性がない
担当者が新規事業の目的を理解していなかったり、既存業務で忙しかったりすると、他人事のように感じてしまうケースが少なくありません。そうなると、失敗の要因であるモチベーションの低下につながってしまいます。
(2)技術面を中心としたアイデアになる
新規事業においては、市場や顧客のニーズ、競合他社の状況など幅広い視点が必要です。しかし、これまでの実績や成功体験からアイデアが技術面に偏ってしまう場合があり、特に製造業では、顕著になります。
(3)既存事業と同じように新規事業を評価してしまう
既存事業であれば、売上や利益率などの評価方法が確立しているでしょう。一方、新規事業に関しては、収益モデルが確立していないため、新規事業を既存事業と同じように評価してしまうと適切に評価できません。その結果、事業の縮小や社員のモチベーションの低下につながる恐れがあります。
新規事業を成功させるポイント
新規事業を成功させるには、以下の4つのポイントを押さえましょう。
(1)新規事業のビジョンを明確にする
まずは、新規事業に取り組む目的や方向性を明確にします。新規事業は失敗するケースが多く、社員のモチベーションを維持するのは簡単ではありません。そのため、ビジョンを明確にし、失敗しても次に生かせるよう社員の意欲を維持することが大切です。
(2)市場や顧客ニーズを意識する
市場や顧客ニーズに合った事業でなければ利益は得られないため、成功の実現には至らないでしょう。アイデアを生み出す段階から、ターゲットとする顧客やニーズを意識して進めることが重要です。
(3)観察力を育てる
世の中には、さまざまな情報があふれています。観察力を高めれば、情報社会の中でも新規事業に役立つアイデアが発見できるでしょう。そのためには、常にアンテナを張り巡らし、さまざまなことに注意を払うことが大切です。
(4)組織全体のコミュニケーションを活性化する
新規事業では、情報伝達のスピードや社員のモチベーション維持が重要です。トラブルの報告や決定事項の承認などに時間がかかったり、社員の意欲が低かったりすると、新規事業の成功は難しいでしょう。そのため、関連する部門間の連携や、経営層・上司・部下などさまざまな人の間でのコミュニケーションを活性化する必要があります。
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大企業が行った新規事業の成功事例
大企業の新規事業に関する取り組みは、必ずしも成功するわけではなく、失敗するケースも多くあるでしょう。そのような中、新規事業を立ち上げた3社の成功事例を紹介します。
日本郵政・Yper株式会社による「OKIPPA」
日本郵政では、家主の不在による荷物の再配達が課題でした。また、2024年4月[1] から始まる、働き方改革関連法に伴う「ドライバーの労働時間の大幅な規制」により、人材不足が懸念されています。そのような中、日本郵政は「Yper株式会社(物流系ITベンチャー)」と共同で、「OKIPPA」というサービスの提供を開始しました。「OKIPPA」とは、折りたたみ式宅配ボックスを玄関先に設置するだけで、不在でも玄関で荷物を受け取れるサービスです。このサービスにより、日本郵政の再配達率は大幅に改善され、利用者も順調に増えています。
富士フイルムの化粧品開発
富士フイルム株式会社は、もともとは写真フィルムの分野を軸として事業を行っていましたが、デジカメの普及により市場の縮小に直面しました。そこで、富士フイルムが新規事業として立ち上げたのが「化粧品事業」です。写真フィルム事業と化粧品事業では、全く異なる分野のように見えます。
しかし、富士フイルムには写真フィルム分野で培った「ナノテクノロジー(原子や分子レベルで制御する技術)」があり、この技術を化粧品に生かすことで成功に至ったのです。富士フィルムの取り組みは、新規事業と既存事業のシナジー効果によって成功した事例と言えるでしょう。
ダイハツ工業株式会社の「らくぴた送迎」
ダイハツ工業株式会社は、軽自動車や小型自動車を主力とする自動車メーカーです。ダイハツ工業では、新規事業として「らくぴた送迎」という、介護事業者を支援する送迎サービスを開始しました。
このサービスでは、送迎業務を効率化するさまざまな機能が備わっており、現在では全国の多くの介護施設で利用されています。介護業界の人手不足に着目し、既存技術を新規事業に応用した成功事例です。
まとめ
新規事業の立ち上げは、多くの大企業で行われていますが、成功した事例が多いわけではなく失敗に終わった事業も存在します。新規事業が失敗する原因として、大企業ならではの要因があるため、ポイントを押さえて新規事業に取り組みましょう。
また、新規事業の立ち上げに関しては、こちらの記事でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
「企業の成功・失敗事例にみる新規事業立ち上げのポイント!事業計画の基本をおさえよう」はこちら
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