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事業承継に欠かせない法律! 「経営承継円滑化法」のメリットやルールを解説

事業承継を計画・推進していても、税の負担・相続の問題で、断念する方は少なくありません。そこで事業承継を円滑に実行するための法律として、「経営承継円滑化法」が施行されました。この記事では、経営承継円滑化法の概要やメリットについて解説します。

経営承継円滑化法とは?

「経営承継円滑化法」は、2008年に施行され2018年に改正された、中小企業の事業承継を円滑にするための法律です。正式名称は「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」です。

同法律では、「事業承継税制」「遺留分に関する民法の特例」「金融支援」の3点を柱に、事業承継を支援しています。

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経営承継円滑化法が改正された背景・目的

経営承継円滑化法を改正した背景には、親族外の事業承継の増加が挙げられます。かつては親族内承継が9割以上を占めていたものの、近年は親族外承継が3割を超えており、事業承継を考える上での選択肢となっています。

また中小企業・小規模事業所の事業承継では、承継に必要な資金調達が難しく、承継後の経営が安定しないといった問題がありました。

これらの問題に対して、総合的な支援策として成立した法律が「経営承継円滑化法」です。

経営承継円滑化法のメリット

納税猶予制度により事業承継が円滑になる

事業承継税制(特例措置)の納税猶予制度により、事業承継に関する相続税・贈与税が、一定の要件を満たすことで猶予されます。改正前の猶予対象者は後継者1名のみでしたが、後継者が複数いる場合も考えられ、最大3名までとなりました。なお、この特例措置の認定は以下の2種類があります。

第一種特例認定
先代経営者から後継者への相続・贈与等の場合

第二種特例認定

先代経営者以外の株主から後継者への相続・贈与等の場合

遺留分に関する民法の特例がある

事業承継を円滑に行うために、遺留分に関する民法の特例があり、相続紛争や自社株式・事業用資産の分散を防げます。遺留分とは相続に当たり最低限保証されている、相続分のことです。

中小企業の場合、経営者が自社株を保有する割合が高いといえます。親族内承継であれば、遺産に占める自社株式や事業用資産の割合が大きいと、後継者は他の相続人の遺留分を侵害する可能性が高く(遺留分侵害請求)、相続紛争に発展するリスクがあります。

しかし民法特例の利用で、遺留分の受け取りが可能な人、つまり法定相続人の合意があれば遺留分を減らすことが可能です。

合意の内容は以下の2つとなります。

除外合意
「除外合意」とは、自社株式や事業用資産などを遺留分の算定計算から除外することを、他の相続人全員が合意することです。除外合意をすることで、遺留分を算定するための財産の価額から除外されるため、相続後の遺留分侵害請求を未然に防止できます。

固定合意
「固定合意」を行った場合、相続開始時の財産を基準に遺留分の算定がされます。

そのため、相続開始時までに株式の価値が上昇しても、遺留分には影響しないので、後継者は企業価値向上を目指して経営に専念できます。

事業承継に必要な資金調達の支援

都道府県の認定を受けた中小企業は、事業承継後、経営に必要な資金を中小企業信用保険法の特例によって、金融機関から借りやすくなります。また、この特例では、承継に必要な資金の融資について、信用保証協会が積極的に保証を行うことができます。

経営承継円滑化法のルール

相続税と贈与税が猶予される

経営承継円滑化法では、事業承継を支援するための税制措置が用意されています。この措置は「事業承継税制」と呼ばれます。事業承継税制が適用されると、贈与税に加えて、相続税の納税も猶予・免除されます。

ただし申請手続きは複雑で、廃業した場合は利子税が発生する可能性があるため、注意が必要です。

申告前後のスケジュール

適用を受けるためのスケジュール
まず特例承継計画の作成をします。計画作成時は、中小企業診断士や税理士、弁護士などの「認定経営革新等支援機関」の指導、助言を受けましょう。

その後は、株式の贈与を行った後・相続が発生した後に、都道府県庁に認定申請を行います。適用の要件を満たしていれば、都道府県庁から認定書が交付されます。認定書が交付されれば、相続税・贈与税の猶予を受けることが可能です。

適用を受けた後のスケジュール

事業承継税制は適用後5年間は年に一度、都道府県庁および税務署に届出・報告を提出しなければなりません。

5年目で従業員数が事業承継時と比べ、5年平均8割を維持できていなければ、計画の報告書を都道府県庁に提出します。雇用率を維持できていない理由が、経営環境の悪化であれば、認定経営革新等支援機関の助言・指導を受ける必要があります。

6年目以降は3年に一度、税務署への届け出の提出が必要です。

特例承継計画には提出期限がある

特例措置の利用時は「特例承継計画」を都道府県庁に提出しなければなりません。2022年の税制改正により、提出期限は2018年4月1日から2024年3月31日と定められました。なお、この特例措置は、2018年1月1日から2027年12月31日までの相続・贈与への相続税・贈与税についての適用である点に注意しましょう。

経営承継円滑化法の改正後の課題

猶予期間でありいずれは清算

事業承継税制は、あくまで納税が猶予される制度です。2025年度以降に特例制度がなくなり、贈与税とともに猶予分の納税をまとめて清算要求されるので、企業が保有する資金が大きく減るリスクがあります。

株価が高くないとメリットは少ない

株価が低い会社では、事業承継税制の恩恵は少ないといえます。事業承継税制の手続きは複雑で、専門知識が必要なので、外部に委託すると費用がかかります。しかし、後継者が株を買い取った際にかかる譲渡税の方が、外部への委託コストより安くなる場合もあるので、会社の経営状況に合わせて判断しましょう。

遺留分に関する民法特例

中小企業は、個人資産を事業に使うことがあります。そのため、個人の事業用財産も除外合意の対象にするかどうかを検討する必要があります。遺留分に関する民法の特例はありますが、生前に合意していても、相続人の主張が変わる可能性もあるでしょう。そのため、遺留分に関する特例を利用するかは、慎重に判断する必要があります。

金融支援を受ける必要がない場合もある

金融支援措置として信用保証協会の利用できるものの、保証協会の制度を使うと保証料がかかります。金融機関の金利よりも高くなるケースがあるため、支援が必要か否か、事前に確認しておきましょう。

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まとめ

事業承継に欠かせない法律である「経営承継円滑化法」には、納税猶予制度や遺留分に関する民法特例、事業承継に必要な資金調達の支援があります。この法律をよく理解することで、円滑な事業承継を進めましょう。

過去の記事では、事業承継の際に申請できる補助金について解説しているので、ご参照ください。
「事業承継補助金」の審査に通るためのポイント」はこちら

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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