COLUMNコラム
後継者難の倒産が初の500件超、直前まで黒字「あきらめ廃業」高水準/アフターコロナ、問われる中小企業支援
2023年の倒産件数は8497件(前年比33.3%増)で、1990年のバブル経済崩壊後で最も高い増加率を記録し、24年の1万件突破は確実視されている。初めて後継者難倒産が500件を超え、直前まで黒字にもかかわらず休廃業する「あきらめ廃業」も高水準で推移しており、アフターコロナの中小企業支援は大きな転換期を迎えている。
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日本経済の「もったいない事態」
帝国データバンクの調べによると、2023年の倒産件数は8497件。原因は、物価高(インフレ)775件、ゼロゼロ(実質的無担保・無利子)融資返済難651件などと並んで見逃せないのが、初めて500件越えになった後継者難倒産564件だ。
また、倒産ではないが、2023年に休業・廃業・解散した企業は5万9105件(個人事業主含む)あり、2019年以来4年ぶりに前年を上回った。このうち休廃業直前期の当期純損失が黒字だった企業は、全体の51.9%もあった。
やむなく会社を畳んだ「あきらめ廃業」と言え、半分が黒字なのに休廃業する「もったいない」事態だ。
中小企業の経営や事業承継に詳しい、立命館大学経営学部の久保田典男教授は、こうした後継者難倒産や「あきらめ廃業」をさせないために、日本では事業の再生や事業継承が極めて重要な課題になっていると指摘する。
久保田教授によれば、中小企業支援はコロナ禍以前、コロナ禍、アフターコロナで変化が生じている。
アフターコロナ、中小企業経営者の「腹落ち」が重要に
コロナ禍以前は持続的な経営、地道な開拓などの取り組みや業務効率化に向けた支援が中心だった。これがコロナ禍では資金繰り支援がメインになった。
そしてコロナ禍~アフターコロナの現在、「ゼロゼロ融資の借り換え保証に加えて、成長分野に向けた大胆な事業再構築を推進する必要性がある」と久保田教授は指摘する。
2023年3月に中小企業庁が策定した事業再構築補助金支援の対象となる事業再構築の定義では①新市場進出、②事業転換、③業種転換、④事業再編による新市場進出・業種転換・業種転換、⑤国内回帰の5つが挙げられている。
またアフターコロナでは「伴走支援」の重要性を久保田教授は指摘している。これは、経営者に課題を与えて解決させるのではなく、対話を通じて課題を気付かせ、経営者に「腹落ち」(納得)させることが重要だとしている。これが現在のような不確実な時代では、自己変革・潜在力の発揮につながるという。
経営者に大切な3つのポイント
久保田教授は、経営者には、以下の3つのことが重要だとしている。
- 承継前(役員就任時)から事業面での事業再構築の取り組みを担うこと、つまり自社の強みを認識し、強化する取り組みを行うこと。
- 社内の人材マネジメントで新たな取り組みを行い、イエスマンではない自立型人材の育成・活用など後継者としてのリーダーシップを発揮すること。
- 入社前後に多様な経験を積むと同時に多様なネットワークを構築することで視野を拡大する。ファミリー経営の場合はもちろん、ファミリーではない外部からの経営者でも同様だ。
一方、支援機関に求められるのは、経営者に視野の拡大や人的ネットワークを得る機会の提供が重要だとしている。さらに支援機関には、前述した「伴走支援」を基本にしながら、支援機関間の情報の共有、連携促進が求められるとしている。
(取材・文/ジャーナリスト 三浦 彰)
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