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自社株買いってどういうもの? 事業承継の際の自社株買いについても解説!

自社株買いとは、自社の株を株式市場から買い戻すことです。自社株買いは、敵対的買収の防止や投資家へのアピールなどの効果があるほか、事業承継を行う際にも有効な手段です。この記事では、事業承継を考えている方向けに、自社株買いのメリット・デメリットや自社株買いを活用した節税対策について解説します。

事業承継に際しての自社株買いについて

自社株買いとは?

過去に発行した株式を自らの資金を使い、株式市場から買い戻すことです。株式市場から自社の株式を購入し消却すると、1株当たりの資産価値が上昇します。また、購入した自社株は消却せずに、「金庫株(自己株式)」として保有継続もできます。

自社株買いのメリット

事業承継に際しての自社株買いには、以下のようなメリットがあります。

1.税負担を抑えられる
事業承継の際、後継者の保有している自社株を会社が買い取れば、後継者の資金確保が可能です。この資金は、事業用資産などの相続税の支払いに充てられます。事業承継では、さまざまな財産を経営者から引き継ぐため、多くの相続税や贈与税が発生します。この税負担が事業承継のハードルとなっているのです。そのため自社株買いは、後継者の税負担軽減に有効といえるでしょう。

2.株式分散防止ができる
株式会社の経営権は持株比率により決定されるため、「株式分散」は避けなければなりません。株式が分散すると、後継者以外の株主の発言権が増し、経営がうまく進まない可能性があります。そのため、事業承継の際は株式を後継者に集約させることが重要といえます。

分散して保有されている自社株を買い取れば、後継者に経営権を集中できるため、事業承継後も円滑な意思決定ができるでしょう。

自社株買いのデメリット

一方、以下のようなデメリットも存在します。

1.買付ルールが定められている
自社株買いは、株価に影響を与えるため、ルールが定められています。具体的には、株式の買取時点の「分配可能額」までしか自社株買いはできません。分配可能額は、おおよそ「その他の資本余剰金の額+その他利益余剰金の額」となります。そのため自社株買いを行う際には、買取時点の余剰金の額を計算しておくことが重要です。

2.多額の取得資金が必要
自社株買いには、当然多額の資金が必要になります。手元のキャッシュが減ることにより、経営資金が足りなくなる恐れもあるでしょう。事業承継を行う際に、自社株買いを活用する否かは、自社の財務状況に合わせて考える必要があります。

事業承継における自社株買いの手続き

自社株買いの手法

自社株買いには、買い取る株主を特定しないケースと、特定するケースがあります。以下で2つのパターンを解説します。

買い取る株主を特定せず自社株買いを行う場合
以下、4つのステップを踏む必要があります。

1.株主総会の普通決議
自社株買いをすることやその詳細を、株主総会で決議します。

2.取締役会の決議
株主総会の決議された範囲内で、具体的な事項を決定します。

3.株主への通知
取締役会で決議した内容を株主へ通知します。

4.株主からの譲り渡し申し込み
通知を受けた株主で譲り渡しの意思がある人は、会社に申込みを行います。

買い取る株主を特定して自社株買いを行う場合
以下のステップを踏む必要があります。

1.売主追加請求
2.株主総会の特別決議
3.取締役会の決議
4.株主への通知
5.株主からの譲り渡し申し込み

「買い取る株主を特定しないケース」と異なる点が2つあります。

まず「売主追加請求」というステップが発生します。特定の株主からの自己株式取得を行う場合、株主は「特定の株主」に自らを加えたものを、株主総会の議案として請求できる決まりがあります(会社法160条3項)。これは、株主に対して平等に売却機会を与えるためのものといえるでしょう。なお、「相続人から自社株買いを行う場合」、「定款で売主追加請求を排除した場合」は、売主追加請求は不要です。

また、買い取る株主を特定したのちに自社株買いを行う際は、特別決議が必要なところも相違点の一つです。

自社株買いのポイント

事業承継における自社株買いの際に、抑えておくべきポイントを紹介します。

1.株主の構成が変化する
自社株買いによって取得した株式には、議決権がありません。議決権がなくなることに伴い、株主構成における議決権の比率が変化します。そのため自社株買いを行う前に、取得後の株主構成をしっかり想定し、経営にどのような影響があるのかを考える必要があります。

2.事業承継税制などを活用する
政府は「事業承継税制」などの事業承継支援策を用意しています。

事業承継税制とは、中小企業の事業承継がスムーズに進められるように設けられた税制優遇措置です。

この制度では一定の要件を満たせば、贈与税・相続税の支払いが猶予されます。事業承継時の資金調達などが容易になり、後継者が引き継ぐ財産に対する税も軽減されます。このほかにも、さまざまな事業承継支援策があるため、積極的に活用していきましょう。

まとめ

この記事では、事業承継に自社株買いを活用する際の手続きや、メリット・デメリットについて解説してきました。自社株買いは、事業承継を効率良く行うための方法の一つです。これから事業承継をお考えの方の参考になれば幸いです。
以下の記事では、事業承継で自己株式を活用する具体的なメリットを解説していますので、ぜひご覧ください。
「事業承継で自己株式を活用するメリットは?」

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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