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なぜ、「ジャパネットたかた」と「西松屋」は事業承継を成功できたのか?

事業承継は経営者にとって一大イベント。誤った順番で承継を進めてしまった結果、従業員や取引先が離れてしまう結果になることもあります。本記事では、有名企業の事業承継の例から「事業承継ですべきこと」を読み解き、ポイントを紹介します。

「ジャパネットたかた」の成功事例

「ジャパネットたかた」といえば、テレビショッピングで言葉巧みに商品の魅力を伝えるカリスマ創業者・髙田明氏を思い浮かべる人が多いでしょう。そんなジャパネットたかたは2015年、事業を承継しました。

ジャパネットたかたの経営を引継ぎ、売上をどんどん拡大させているのが、二代目の経営者・髙田旭人(あきと)氏。

ジャパネットたかたの事業承継が成功したのは、父と子の信頼関係があったからです。

証券会社を経てジャパネットたかたに入社した旭人氏は、「カリスマ経営を脱却しなければならない」と考えます。そこでどんどん父に意見をし、コールセンターの働き方改革や、24時間限定で一つの商品をお得に販売する「チャレンジデー」の企画などといった挑戦を重ねます。

そんな旭人氏は、父・明氏と常に「バチバチだった」と振り返りますが、それも明氏が旭人氏の実力を認めていたからでしょう。仕事に関しては容赦なく意見を交わすものの、相手の人間性は決して否定しない――。親族ではあったものの、そんな関係性だったといいます。

ジャパネットたかたの29回目の創立記念日である2015年1月16日、旭人氏は社長に就任します。明氏は表舞台からすっぱりと身を引き、すべて旭人氏に任せる姿勢を見せました。修行中はしっかり鍛え、退任後はすべて任せる――。なかなかできないことですが、これもまた、ジャパネットたかたの事業承継が成功した理由でしょう。

特に中小企業の場合、承継後も創業社長が経営に関わりすぎてしまうという失敗事例はよくあります。そうなると後継者の成長は鈍化してしまいますし、従業員としても「どっち側につくべきか……」と悩んでしまいます(多くの場合、先代につくことになるのですが)。親族内でトラブルに発展することもあるでしょう。そう考えると、「後継者に任せる勇気」は非常に大切だといえます。

旭人氏の社長就任後、ジャパネットたかたは増収を続け、過去最高売上高を更新中です。

【ジャパネットたかたに学ぶ、事業承継成功のポイント】
・親と子の信頼関係を大切にし、忌憚なく意見交換をする
・後継者をしっかり鍛え、退任後は口出ししない

【特別インタビュー動画をご覧いただけます】
第1回放送】株式会社ジャパネットホールディングスの事業承継(本編)

【旭人氏へのインタビュー記事はこちら】
「「二代目×息子」が感じた、事業承継の難しさ ――父との対立を乗り越えた先にあるもの/髙田旭人インタビュー」

「西松屋チェーン」の成功事例

おむつにベビーカー、衣料品までそろう、乳幼児・小児用品店「西松屋」。店舗数は1000を超え、2022年2月期の決算では、コロナ禍であるにもかかわらず過去最高益を記録しました。

そんな西松屋を率いるのは、32歳の若さで父から事業を引き継いだ、三代目社長の大村浩一(こういち)氏です。株式会社西松屋チェーンの事業承継成功の裏には、先代が1年半かけて行った“社長育成”プロジェクトがありました。

浩一氏は2014年、26歳で西松屋チェーンに入社。店舗運営の現場や店長たちの統括を担当した後、法務やIRなど、経営に必要な経験を積みます。社長就任の前年となる2019年には、浩一氏のために新設されたポスト「社長補佐室長」に就任しました。

社長補佐室長の仕事は「社長業(経営)を学ぶこと」。先代が従業員と打ち合わせをしたり、取引先と面談したりするときに同席し、父からOJTを受けました。そして徐々に、打ち合わせや面談は浩一氏に任されることとなります。

その背景には「社長業ができない人間に経営者は任せられないが、やらせてみないと適性はわからない。いったん息子に任せて、実績が出るかどうか見てみよう」という、先代の考えがあったようです。

また先代は、早い段階から浩一氏にどんどん仕事を任せ、口出しせずにいたそう。仕事に関して喧嘩や言い合いになった記憶もほとんどないのだといいます。

その理由は、目指すべき方向が同じだから。これまでと違うことをやってもいい。それが会社の発展につながり、お客さまのためになるなら、やらせてみようじゃないか――。父にはそんな想いがあったのだろうと、浩一氏は振り返ります。

事業承継が成功した背景には「引継ぎの1年半」がありました。その1年半は、禎史氏と浩一氏の信頼関係と、会社やお客さまを心から思う気持ちによって成り立っていたのです。

【西松屋に学ぶ、事業承継成功のポイント】
・修行期間中は、先代の背中を見せ、学ばせる
・早い段階から後継者に仕事を任せ、口出ししない

【特別インタビュー動画をご覧いただけます】
【第2回放送】株式会社西松屋チェーンの事業承継(本編)

【浩一氏へのインタビュー記事はこちら】
前編|「父との「阿吽の呼吸」でスムーズに承継!三代目社長が事業承継を成功させた仕組みに迫る」
後編|「赤字ギリギリの状態で就任、 利益を5倍に向上させた驚くべき経営改善とは?」

まとめ

有名企業の事業承継の成功事例を2つ、紹介しました。ジャパネットたかたと西松屋に共通していたのは、「後継者を信頼し、先代は口出ししない」こと。新しい風を取り込み、会社を発展させていきたいなら、後継者を信じる心が欠かせないのです。

昨今、後継者不在によるM&Aも増えていますが、M&A(第三者)にはない「親族だからこそ実現できる承継の形」はあります。「うちの息子(娘)は会社を継ぐことに興味はない」と経営者が勝手に思い込んでいるケースも珍しくありません。ぜひ最初から諦めずに、一言でも声をかけてみてはいかがでしょうか。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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