COLUMNコラム
大会社が事業承継するときの3つのポイント
事業承継は、どんな会社にとっても一大イベントです。大会社であればなおのこと。多くの従業員や取引先の生活がかかっていますから、失敗は決して許されません。本記事では、大会社が事業承継をするときのポイントなどを紹介します。
目次
ポイント①他社の事例を参考にする
何かをしようとするとき、成功事例・失敗事例を確認して教訓を得るのは定番の手法でしょう。事業承継でも、自社と同規模・同業界の会社の事例を確認し、成功へのヒントをつかむことをおすすめします。例えば同族企業の大会社として、以下のような企業が挙げられます。
・トヨタ自動車
・江崎グリコ
・味の素
・キヤノン
・パナソニック
・阪急電鉄
・東京急行電鉄
・サントリー
・ヤンマーホールディングス
・マツダ
・フォード
・ディオール
また、経営を巡る騒動として、大塚家具の承継を記憶にとどめている方も多いでしょう。そうした事例から学ぶべきものは多いはずです。
ポイント②自社株の評価額を抑える方法を知る
事業承継において、キーワードのひとつとなるのが「自社株の評価額」。どの理由を紹介しましょう。
「親族」と「従業員」への承継では、自社株の評価額を抑えよう
事業承継の相手は、大きく分けて以下の3つです。
1.親族(子や子の配偶者、自分の配偶者、姪や甥など)
2.従業員(自社の従業員)
3.第三者(M&Aなど)
親族と従業員に承継する場合は、自社株(非上場株)の評価額を下げることがカギとなります。自社株の評価を下げることで、後継者の取得費用や税負担を抑えられるからです。逆にM&Aの場合は、自社株の評価額を高くすることをめざすといいでしょう。自社株の評価額を上げることで、オーナーに支払われる金額が増えるためです。
自社株の評価方法
大会社・中会社・小会社と、会社の規模によって自社株(非上場株)の評価方法は変わります。大会社に該当するのは、次のような企業です。
・従業員数70人以上。
・従業員数70人未満、売上高30億円以上の卸売業。
・従業員数70人未満、売上高20億円以上の小売・サービス業。
・従業員数70人未満、売上高15億円以上のその他業種。
・従業員数36人~69人、総資産価額20億円以上の卸売業。
・従業員数36人~69人、総資産価額15億円以上の小売・サービス業。
・従業員数36人~69人、総資産価額15億円以上のその他業種。
大会社の自社株は「類似業種比準価額方式」で評価します。「純資産価額方式」で評価することもできます。「類似業種比準価額方式」とは、類似業種の株価並びに1株当たりの配当金額、年利益金額及び純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)を基にする評価方法です。「純資産価額方式」は、相続税評価ベースにおける総資産と負債の差額(純資産)をベースに評価する方法です。
自社株の評価を下げるには?
事業承継においては、自社株の評価を下げることがひとつのポイントとなります。それぞれの評価方式について、自社株の評価を下げる方法を紹介しましょう。
・類似業種比準価額方式の場合
1.配当金額を下げる
2.役員や従業員の給与を増やして利益を減らす
3.純資産額を減らす。含み損がある資産を売却、償却する
4.自社株を従業員持株会に譲渡する
・純資産価額方式の場合
1.赤字にする
2.不動産等保有資産を見直す
3.純資産額を減らす
ポイント③事業承継税制は使えない
近年、事業承継の負担を減らす制度として注目されている「事業承継税制」。その内容をご存じでしょうか。事業承継税制とは、一定の要件を満たすことで、後継者が負担する相続税や贈与税が猶予、あるいは免除される制度です。その恩恵を受けるためには、2024(令和6)年3月31日までに特例承継計画を策定し、都道府県知事に提出たうえで認定書を受領する必要があります。この税制を活用するには「会社の要件」「先代経営者の要件」「後継者の要件」「その他の要件」を満たさなければなりません。「会社の要件」の一つとして「承継法上の中小企業であること」が挙げられています。
つまり大会社の場合、事業承継税制の対象にならないのです。相続税や贈与税の猶予、免除を受けられないことを前提に、資金を準備する必要があります。
事業承継税制について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
(「事業承継で相続税が免除になる方法!――5分でわかる「事業承継税制」の仕組みとポイント」)
まとめ
大会社は事業承継によって、良くも悪くも周囲に大きな影響を与えることが予想されます。事業承継が目前に迫ったり、いざ事業承継が発生したりしてからでは手遅れになりかねません。現経営者が健康でバリバリ働けるうちに、事業承継の計画を立てておきましょう。
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