COLUMNコラム
事業承継するなら知っておくべき法律!「経営承継円滑化法」の改正は何をもたらすか?
事業承継を断念する主な理由の一つが、資金の問題です。事業承継による相続税や贈与税、あるいは株式の分配によって、事業を継続したいが資金に余裕がない、納税を負担できる後継者がいないといった状況に陥るケースは珍しくありません。そうした問題点を解決するために成立したのが、「経営承継円滑化法」です。本記事では、この法律の概要やメリットなどを解説します。
目次
経営承継円滑化法とは?
経営承継円滑化法は平成20年(2008年)に成立しました。正式名称は、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律。中小企業を対象に、事業承継を促すことを目的としています。経営承継円滑化法の認定=事業承継税制の適用になるのが基本であるため、両者は双子のような関係といえます。
経営承継円滑化法が成立・改正した背景
中小企業を取り巻く厳しい現実
日本における中小企業の数は全体の約99%であり、従業員数では約70%を占めています。しかし、中小企業庁の発表によると、2025年までに、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人で、うち約半数の127万(日本企業全体の3分の1)は後継者未定という結果が出ています。
また現状を放置した場合、中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年までの累計で約650万人 の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があるとの予測もされています。
改正によって、より利用しやすく・メリットが大きく
このようにして、経営承継円滑化法が平成20年に成立しました。しかし、後述するような納税猶予を受けるための制度利用の手続きが煩雑で、2013年時点における事業承継税制の認定件数は、わずか195件。そこで、2013年、2017年に経営承継円滑化法の改正を実施。
事業承継税制の適用範囲を親族外まで広げ、相続時精算課税の併用を可能にするなど、より実施しやすいものとなりました。そして2018年、税制改正大綱において、この経営承継円滑化法の条文が大きく改正され、2018年1月1日から2027年12月31日までの特例制度が創設されました。
改正された経営承継円滑化法のメリット!
経営承継円滑化法の認定を受けると、次のような支援を得ることができます。
①税制支援
ここでいう税制とは、事業承継税制のこと。
経営承継円滑化法の認定=事業承継税制の適用と前述しましたが、まさにそのことを意味します。事業承継税制とは、諸条件を満たすことにより、事業承継のために後継者が取得した自社株式にかかる贈与税・相続税の納税猶予を受けられる制度です。
一定期間、要件を満たし続ければ、有用された税額は免除になります。改正前の規則では1名の後継者が想定されていましたが、改正後は最大3名までの後継者への承継も可能になりました。そのほか、代表者以外の者からの贈与で非上場株式を取得する場合、5年以内に当該贈与などに係る申請書の提出期限が到来する人にかぎり、特例制度の対象となるなどの項目も追加されました。
事業承継税制の詳しい内容は、こちらの記事をご確認ください。
(「事業承継で相続税が免除になる方法!――5分でわかる「事業承継税制」の仕組みとポイント」)
金融支援
中小企業信用保険法、日本政策金融公庫法等の特例といった資金調達を支援してもらえる制度があるので、都道府県の認定を受けることができれば、金融支援を受けられます。
株式や事業用資産等の買取資金や、信用状態が低下している中小企業者の運転資金などを借り入れる可能性がありますので、資金面での懸念がある人は検討してみてはいかがでしょうか。
遺留分に関する民法の特例
中小企業の場合、基本的には経営者が自社株式のすべて、あるいは大半ほど所有しています。しかし親族内承継の場合、遺産に占める自社株式や事業用資産の割合が大きいと、後継者は他の相続人の遺留分を侵害する可能性が高く(遺留分侵害請求)、いわゆる争続に発展してしまうリスクもあります。
ただ、事前に後継者と推定相続人全員で合意を得ることができれば、民法の特例の適用を受けることができます。この民法の特例は、2つあります。
1つは、生前贈与された自社株式や事業用資産などを遺留分の対象から外す除外合意です。遺留分を算定するための財産の価額から除外されるため、相続後の遺留分侵害請求を未然に防止することができます。
もう1つは、後継者が事業を成長させて株式価値が上がった場合でも、相続開始時の財産を基準に遺留分の算定される(=生前贈与株式などの評価額をあらかじめ固定する)固定合意です。これにより、後継者の経営意欲を阻害せずに事業承継できます。
まとめ
経営承継円滑法は、適切に活用することで税制支援、金融支援、遺留分に関する民法の特例といった幅広い支援を受けることができます。ただ、適用を受けるにはさまざまな条件を満たす必要がありますので、専門家のサポートを受けながら活用を検討しましょう。
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