COLUMNコラム
サクセッションプランとは。成功事例から探る、2代目育成の手法と狙いは?
事業承継時の後継者育成では、候補者の能力に合わせた育成計画を作成することが重要です。実際に成功した「ジャパネットたかた」や「西松屋」「セガサミーグループ」の事例を引き合いに、サクセッションプランの目的や作り方、成功事例について解説します。
目次
サクセッションプランを策定する目的とは
サクセッションプランとは、経営者や経営幹部の後継者を育成する計画に基づいた後継者育成のための人材育成手法です。
企業がサクセッションプランを策定する目的は主に2つあります。
1つ目は、企業を存続させ、持続的に成長していくためです。企業経営において経営者や経営幹部の能力は業績や企業そのものの成長に大きく影響します。そのため、サクセッションプランを策定して幅広い人材のなかから後継者にふさわしい人材を選出し、長期的な目線で計画的に育成する必要があります。
2つ目は、上場企業が順守すべき「コーポレートガバナンス・コード」に記載されたためです。コーポレートガバナンス・コードとは、企業統治(コーポレートガバナンス)のガイドラインとして東京証券取引所が示した原則・指針のことで、現在は上場企業のみに適用されます。コーポレートガバナンス・コードには後継者育成に関しての記載があり、サクセッションプランを策定する必要があります。
また、取締役会もサクセッションプランに沿って育成が計画的に実施されているかを第三者的な視点から監督しなければいけません。
サクセッションプラン実行の注意点を紹介
長期的な取り組みとなる
サクセッションプランの実行には長期的な時間を要します。理由として、育成の成果が出るまでには一定の時間が必要になることや、育成途中で候補者が退職する可能性があるということが挙げられます。
少なくとも5〜10年ほどの時間が必要とされることを想定しておきましょう。
社員のモチベーションを維持しなければならない
社内から候補者を選定した場合、選ばれなかった社員のモチベーションが下がってしまう恐れがあります。そのため、候補者の選定に他薦を取り入れて他の社員の声を聞いたり、候補者を定期的に見直したりするなど、モチベーションを維持するための仕組みづくりが重要です。
また、社外から選出する場合も、社内全体のモチベーションが下がってしまわないように注意しなければなりません。
サクセッションプランにおける育成計画の作り方
①候補者のスキルや経験を確認する
サクセッションプランでは、候補者のスキルを伸ばすことはもちろんのこと、足りていない部分についても育成するので、事前に候補者の能力や経験について確認することは重要です。
実務経験や語学などのスキルだけではなく、リーダーシップやコミュニケーション能力などの資質についても確認しておくと良いでしょう。
②求めるスキルやポジションと候補者を比較する
候補者を選ぶには、企業が将来的に発展させたい事業や分野に合わせて、候補者に求めるスキルやポジションを設定する必要があります。
候補者に求める要件・ポジションが定まれば、それらと候補者の経歴や人柄を比較することで、より適した人材を選出できます。
③候補者の不足部分を補うための育成内容を個別で作成する
育成は比較的長期にわたって行われるので、育成開始時点で知識や経験の不足が見られても大して問題ではありません。
強みを伸ばしつつ、不足部分を補えるような育成プランを、候補者一人ひとりに合わせて作成するようにしましょう。
サクセッションプランの成功事例
ジャパネットホールディングス~責任者としての実績を積ませる
現社長でもある、2代目の高田旭人氏はジャパネットに入社後、コールセンターの運営業務を主に任されていました。それまで、経営方針や会社の組織体制などで何度も先代と対立していたことを見かねた、高田氏の母でもある副社長からの提案でした。
7年間の業務中で、各上司の指導やコールセンターメンバーとの連携の見直しを図ったことで、社員一人ひとりが自ら意志をもって働く職場環境づくりに成功しました。
実際に責任者として実績を積んで得られた成功経験とこの職場環境づくりは、現在のジャパネットの経営にも生かされています。
「名物社長の父との対立を乗り越えた、ジャパネットホールディングスの事業承継」はこちら
西松屋チェーン~社長自らがOJT指導
西松屋チェーンの3代目社長、大村浩一氏は入社当時から店舗運営や法務、IR事業などに携わり、次期経営者としての経験を着々と積んでいました。
社長就任前には、社長補佐室長として父である先代から直接OJTを受け、父の背中を見ながら経営について学んでいきました。この育成プロジェクトは、社長に向いているかどうかはやらせてみないとわからないという、先代の考えがあってのことでした。
早いうちからさまざまな経験を積み、先代のやり方を一番近くで見ていたからこそ、次期経営者としての素養が身についたといえるでしょう。
「父と阿吽の呼吸で成功した、西松屋チェーンの事業承継は」こちら
セガサミーホールディングス~グループ間・海外拠点異動で会社全体を把握させる
セガサミーホールディングスは、パチンコ業界トップメーカーの「サミー」とゲーム業界大手の「セガ」が経営統合して生まれた会社です。セガサミーグループのCEOを務めている里見治紀氏は、かつてサミーの社長であった里見治氏の息子ですが、入社後はサミーとセガの両社でさまざまなポジションを経験していきます。
セガのアメリカ拠点にも異動し、デジタル配信ビジネスの立ち上げやMBAの取得、社内起業で新規ゲーム会社を設立するなど、挑戦を続けていきました。
グループ全体を掌握し、大企業をけん引していく経営者の育成において、あらゆるポジションや環境の中での経験は、必須事項であったとも考えられますが、何よりもこの期間の中で挑戦し続けることを学んだ治紀氏は、社長就任後も「感動体験を創造する」というミッションに挑み続けています。
「グループの成長、改革を成し遂げた、セガサミーホールディングスの事業承継」はこちら
まとめ
サクセッションプランの育成計画の作り方や成功事例を紹介しました。次期承継者に必要なスキルや経験は、事業承継時の経営状況や将来のビジョンによって異なってきます。
今回紹介した事例のように、一方的に先代のノウハウを教えるのではなく、次期承継者の意見ややり方を尊重しながら育成することこそが成功のポイントといえるでしょう。
過去記事では、後継者への引き継ぎ要素についても解説していますので、ぜひご参照ください。
SHARE
記事一覧ページへ戻る