COLUMNコラム
知らなきゃ損! 事業承継の支援策3選
経営者の高齢化、後継者不足などを理由とした中小企業の廃業を減らすため、政府や民間団体ではさまざまな事業承継に関する支援策を用意しています。本記事では、事業承継を進めるうえで知っておくべき支援策を3つ紹介します。
目次
支援策①「事業承継マッチング支援」
事業承継マッチング支援は、後継者がいないことなどを理由に「事業を譲り渡したい」と考える経営者と、創業や新分野進出等を目的に「事業を譲り受けたい」と考える企業や個人をつなぐ、無料のマッチングサービス。運営しているのは政府全額出資の金融機関である「日本政策金融公庫(日本公庫)」です。
2019年のサービス開始以降、順調に拡大しており今後はさらに注目されると予想できます。
「事業承継マッチング支援」を利用するメリット
「事業承継マッチング支援」には、以下の4つの特徴(メリット)があります。
①小規模事業者でも利用できる
日本公庫の融資先の約9割は、従業者数9人以下の小規模事業者です。本サービスにおいても、小規模事業者の利用が中心となるため、会社規模が小さくても利用対象に入ります。
②専門担当者によるサポートを受けられる
日本公庫の専門担当者が利用者の希望を踏まえて、相手企業・個人(マッチング候補)を探してくれます。マッチング後に困ったことが起きても、専門担当者に気軽に相談が可能です。
③無料で利用できる
譲渡希望・譲受希望いずれも、本サービスは無料で利用できます。
ただし、デューデリジェンスや譲渡契約書の作成等で、弁護士等の専門家の支援を受ける場合は費用負担が生じる可能性があります。
④事業を受け継いで創業(継ぐスタ)される人も対象
「事業を受け継いでスタートする創業形態」(通称:継ぐスタ)への関心の高まりを受けて、譲受希望の場合は、事業を営む法人・個人だけでなく「継ぐスタ」を考えている人も、本サービスを利用できます。
なお、「事業承継マッチング支援」を利用する条件、流れ、注意点については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
(「事業承継で使える「日本政策金融公庫」の支援制度とは?」)
支援策②「事業承継税制」
事業承継税制とは、一定の要件を満たすことで、先代経営者から自社株式や事業用資産を引き継ぐときに発生する相続税や贈与税の負担が猶予、あるいは免除される制度のこと。
事業承継税制の適用を希望する企業は、次の4つの要件を満たす必要があります。それぞれ確認してみましょう。
・会社の要件(承継法上の中小企業であること、非上場企業であることなど)
・先代経営者の要件(会社の代表権を有していたこと、承継の直前に一族で50%超の議決権を有していたことなど)
・後継者の要件(会社の代表者であること、後継者一族において50%を超える議決権を保有していることなど)
・その他の要件(納税猶予を受ける税額および利子税額に見合う担保を税務署に提供することなど)
以上の要件を満たした上で、2024年(令和6年)3月31日までに特例承継計画を策定し、都道府県知事に提出して認定書を受領する必要があります。認定を受けたら、2027年までに承継を行わなければなりません。
事業承継税制の適用を受けるための詳しい要件は、こちらの記事で解説しています。
(「事業承継で相続税が免除になる方法!――5分でわかる「事業承継税制」の仕組みとポイント」)
支援策③「官公庁が提供する3つのツール」
自社の現状課題や強み・弱みなど簡単に現状把握ができる、事業承継に役立つ3つのツールがあります。
「事業承継診断」
1つ目の事業承継に役立つツールは、中小企業庁が提供している「事業承継診断」です。親族内承継、従業員承継、M&Aと、あらゆる事業承継のケースで有効に活用できます。このツールは「事業承継診断票」として、全1ページのPDF形式で提供されています。11の質問に対して「はい」か「いいえ」で回答していくことで、事業承継における課題を抽出できるツールです。商工会や金融機関なども、企業との関わりの中で活用しているとされています。
「ローカルベンチマーク」
「ローカルベンチマーク」は事業承継診断と同じく、中小企業庁が提供しており、親族内承継・従業員承継・M&Aで使えます。企業の経営者と金融機関・支援機関等が対話しながら、企業の経営状況を把握・分析するためのツールです。ローカルベンチマークは、「6つの指標」(財務面)、「商流・業務フロー」、「4つの視点」(非財務面)の3枚組みのExcelシートとなっています。
「経営デザインシート」
3つ目に紹介する、事業承継に役立つツールは「経営デザインシート」です。こちらも事業承継診断、ローカルベンチマークと同様、中小企業庁で提供しており、親族内承継、従業員承継、M&Aで活用可能です。経営デザインシートは、説明資料を含め、全26ページのPDF形式で提供されています。ひと言で言うと「将来を構想するための思考補助ツール (フレームワーク)」であると表現されており、シートを埋めることで「企業のこれから」を構想できる仕組みです。
上記で紹介した「事業承継診断」「ローカルベンチマーク」「経営デザインシート」についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
(「事業承継の準備、まずはここから! 官公庁が提供する3つのツール」)
まとめ
事業承継に関する支援策はさまざま用意されており、中には無料で利用できるものもあります。自社の状況・課題に合わせて適切なものを活用し、事業承継をより円滑に進めていただければと思います。
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