COLUMNコラム

TOP 経営戦略 「リスク管理下手」の日本人に大切な価値観とは 「保険仲立人」が語るリスクと挑戦のバランスシート
S経営戦略

「リスク管理下手」の日本人に大切な価値観とは 「保険仲立人」が語るリスクと挑戦のバランスシート

日本総険(本社・高松市)は、顧客の企業と保険会社の間を取り持ち、リスク管理の面から企業経営をサポートする企業です。葛石晋三専務は、日本のリスク管理は「下手」だと指摘しつつ、「いたずらにリスクを回避するだけでなく、挑戦から学ぶ姿勢が重要」 と指摘します。葛石氏に、経営におけるリスクマネジメントについて聞きました。

リスクテイクを認識させた父からの言葉

——日本人の場合、リスクマネジメントは「守り」というイメージが大きいように思います。

葛石 日本では、台風が来ても何もなく通り過ぎ去れば一安心といったような文化が根付いているように感じています。「一晩、布団の中でどうやって過ごすか」という、刹那的な所に大きな力点が置かれているとしか思えないんです。

——リスクマネジメントに関して、海外ではどのように対処しているのでしょうか?

葛石 アメリカなどでは、失敗を最小限に抑えることが重要視される傾向があります。そのため、スタートの段階では経費や損害を最大限に広げないようにすることが求められます。

たとえば、Apple がガレージで創業したように、大規模な投資を避けることでリスクを抑え、スモールな失敗に対処してきました。

——リスクテイクを最小限に抑えることがビジネスでは大切だということですね。

葛石 ビジネスを拡大する際には、自分の能力や経済的な範囲を見極めながら進むべきだと感じています。日本総険の創業者である父は、よく私に「片付けができる範囲を見極めながら物を広げろ」と言いました。最初の段階でのリスクテイク量を適切に認識し、身の丈に合った行動を取ることが重要だと教えていたのではないでしょうか。

ただ、リスクを取ることは、別に悪いことではありません。リスクが顕在化した際に備えるためのリスクマネジメントが重要です。

リスクをコントロールできない場合、自己破産や巨額の賠償金など、人生を左右する深刻な結末を迎える可能性があります。リスクに対する重要な価値観を、もっと日本人が持ってほしいと考えています。

——日本のリスクマネジメントへの価値観を変えるために、何が必要でしょうか?

葛石 ある保険会社さんは、「挑戦の数だけ保険がある」というコピーを掲げています。私もその通りだと思うんですが、保険は課題解決手段の一つに過ぎないということを忘れてはいけません。

企業の事業承継における人脈の承継であるとか、人材のマネジメントに関する課題は、保険だけでは解決できません。挑戦を失敗で終わらせないため、リスクを避けるさまざまな選択肢を考える必要があります。

アインシュタインも「失敗」を大切にした

——保険仲立人の必要性について、あらためて教えてください。

葛石 顧客企業と連携し、彼らのビジネスモデルを把握することが重要です。それが保険仲立人のビジネス基盤です。私たちの会社では、リスクへの専門知識を深め、顧客内部にリスクマネジメントができる人材の育成を促しています。日本のリスクマネジメント意識を変えるのは、現場から変わるものでなければいけないと考えています。

——挑戦とリスクのバランスをどう考えればよいでしょうか。

葛石 アインシュタインが一箇所だけわざと計算を間違える九九の話が好きなんです。彼は黒板に九九を書いていき、最後だけわざと間違えます。見ている子どもたちが笑います。

すると、アインシュタインは「私はそれまですべて正解していたのに、1 つでも間違えたら笑うんですね」と言い、「しかし、決して間違えない人がいます。それは、何も挑戦しなかった人です」と続けたそうです。

これは挑戦の大切さを表した逸話ですが、失敗を避けて挑戦しないよりも、まずはチャレンジし、失敗から学ぶことに意義があります。この考え方は、リスクマネジメントにおいても重要だと思っています。

——リスクマネジメントが経営戦略の一つと言えますか。

葛石 新たなビジネスチャンスを追求する際に、リスクを管理し、失敗から学びながら前進することが大切です。現代のグローバルなビジネス環境では、国境や言語の壁が薄れ、競争はますます激化しています。企業は一地域だけでなく、国際市場にも積極的に参入し、成長戦略を展開する必要があるでしょう。

従来のように、既存のマーケットをひたすら守っているだけでは、安定したサービスを永遠に提供することができるかどうか、はなはだ疑問です。リスクマネジメントは、経営戦略や事業承継において企業の持続可能性や成長に不可欠な要素です。

企業プロフィール

1996 年4 月施行の保険業法の改正で日本に保険仲立制度が生まれたのを機に、大蔵省の登録・認可を受けて同年に創業。「技術でリスクを管理する」というコンセプトのもと独自に研究開発を行ない、クライアント企業の事業態リスクに合わせた保険調達を可能とするIBA(INSURANCE BROKING&AGENCY)COVER を商品として販売。2023 年、保険仲立人として日本で初めてTOKYO PRO Market に上場した。

FacebookTwitterLine

賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

記事一覧ページへ戻る