COLUMNコラム
後継者がいない企業が選ぶべき選択肢とは?
後継者不足が深刻化し、社会問題となっている現在、後継者がいないことを理由に廃業する中小企業はあとを絶ちません。しかし、廃業を選ぶ前に、あらゆる選択肢を考えることが必要です。本記事では、後継者がいない企業に残された選択肢について解説します。
目次
後継者がいない現状は年々悪化している
日本は、実は「老舗大国」とも呼ばれており、200年以上も続く企業が世界一多いというデータもありますが、これを支える大きな要因となったのが「家督制度」です。
「家督制度」が長く主流であった日本では、「長男が事業を継ぐもの」という意識が一般的でした。
しかし戦後の財閥解体により、新たな民法が制定されてこの「家督制度」が廃止されると、親世代側も子世代側も「事業を引き継ぐ」という意識が希薄になっていきます。
現実問題として、「子どもに事業を引き継がせたくない」「親の事業を引き継ぎたくない」という気持ちを抱く経営者層およびその子世代層も増え、中小・零細企業は後継者不足に悩んでいるという実情があります。これは一因にすぎず、昨今の大きな社会変化により、経営における先行き不安という点もあります。
先行きの不透明な時代ですから、事業の将来性に不安があったり負債を返せる見通しが立たなかったりなど、後継者として引き継ぐ魅力を感じられないというケースも散見されます。
後継者がいない会社で、廃業以外の3つの選択肢とは?
それでは、廃業以外の選択肢を見てみましょう。
①親族・社員への継承
後継者がいないのであれば、後継者としてベストな人材を見つけ出せれば、確実な解決策となります。承継する相手としては、いくつかのパターンがあります。
・親族に承継
親族は、最も信頼できる後継者となりえます。
従業員や外部の人よりも、性格や人柄、経験や実績をしっかり把握できるので、安心して承継できるでしょう。親族への承継の場合、会社の経営権を手放さずに済む、税務メリットが得られるというのも、魅力のひとつです。
親族承継の成功例を解説した過去の記事も、ぜひあわせてご参照ください。
(「「二代目×息子」が感じた、事業承継の難しさ ――父との対立を乗り越えた先にあるもの/髙田旭人インタビュー」)
(「父との「阿吽の呼吸」でスムーズに承継!三代目社長が事業承継を成功させた仕組みに迫る/大村浩一インタビュー#1」)
・従業員に承継
会社の従業員に事業を承継すれば、事業のことや会社の社風をしっかり理解していて、社風や業界動向にも精通している相手といえますから、やはり安心な選択肢といえます。
ただし、それまで経営の戦力であった人材であっても、承継にあたっては「経営者」としての器が必要ですから、時間をかけて教育することが必須です。
後継者を育成するポイントについては、こちらの記事もあわせてご参照ください。
(「事業承継における後継者教育のポイントは?」)
・社外から招へい
社外から経営者を招へいする場合、自分で探す以外に、専門家にマッチングを行ってもらうパターンもあります。
ただし、社外からの後継者となる人材を招へいする場合、社内からの反発を受ける可能性もあることには留意しておきましょう。
あわせて、後継者が社風や文化をしっかり理解するために、教育の時間を確保しておくこともポイントとなります。
②M&A
自社を他社に買い取ってもらう方法です。
借金を含めた自社の資産が買い手に引き継がれ、経営主体こそ変わるものの事業を継続することができるのは、経営者として大きなメリットといえます。
ただし、実際に売却できるかはよい買い手が現れるかどうかに寄ります。くわえて、希望する価格どおりに売却できるかは限らない点にも注意が必要です。
③IPO(新規上場)
株式を公開してIPO(新規上場)を行うことで、多額の株式売却益を得ることが期待できます。
経営者はIPO後に株式を保有し続けることも可能ですが、現実問題としてこの方法は中小企業では成功確率はさほど高くはありません。
また、株式公開を行う場合、跡継ぎは株主総会などで決定されます。経営者の希望する経営者とならない場合もある点は、あらかじめ覚えておきましょう。
まとめ
後継者がいない会社の先行きとして、廃業以外に3つの選択肢を解説しました。
自社がこれまで築き上げてきた価値を次世代に引き継ぐことは、経営者に課せられた最大の使命といえますが、そのためにベストな方法を選ばなければなりません。
自社の進退をしっかり見極め、承継のための情報を積極的に吸収し、最適な選択肢を選びたいものです。
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