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「親族の後継者」を甘やかすと「3代で会社はつぶれる」 600万人の雇用を失わないため、どう事業承継に向き合うか

専門家とともに事業承継について実例や知識を深く学ぶ「サクセッションアカデミー」(主催・一般社団法人サクセッション協会)の1回目講義が、3月27日に開かれ、「事業承継の概要と重要性」をテーマに、事業承継そのものや後継者選定について理解を深めました。

事業承継は「単なる引継ぎではない」

サクセッションアカデミーは、事業承継を機に企業の持続可能な成長につなげることを目的に、今年からスタートしました。「サクセッション」は、「承継」や「相続」を意味する言葉です。メガバンク出身の同協会代表理事・原健太郎氏と、約30年以上にわたり外資系企業等でコンサルティング業務を経験した同協会フェロー・中山良一氏が講師を務めます。

中山氏は、「事業承継とは、事業の経営権が次世代に移ることだが、本当の事業承継はそれだけではない」と強調。事業の存続と成長を確実にするための戦略的なプロセスであり、単なる引継ぎ以上の価値を持つとした上で、「事業承継は、感情的な側面と財務的、法的な課題を含んでいるため、計画的なアプローチが不可欠です。高齢者が2200万人になる『2025年問題』に直面している現在、すぐにでも対策をとらなければ後継者不足で倒産が増え、600万人を超える雇用が失われます。それを防ぐための事業承継が重要です」と解説しました。

また、原氏は、「ここ数年、事業承継の件数が増えていないのに『後継者不在率』が減り、すでに後継者不足の倒産が始まっています」と問題点を指摘し、後継者の循環が起きていない状況だと危機感を訴えました。

家族を甘やかすと「3代目でつぶれる」?

「後継者選定の際に重要なスキル」について参加者から問われると、「感情的にならず、冷静に後継者のスキルを定量面、定性面で把握できる能力」と原さんは回答。後継者が家族だからと特別待遇をしてもうまくいかないと話し、「家族への事業承継は有力な選択肢ですが、あまり甘やかすと『3代で家をつぶす』ことにつながりかねない」と説明しました。

サクセッションアカデミーは、会社経営に関わる人や事業承継に興味を持つ創業希望者なら、誰でも参加可能です。詳しくは「賢者の選択サクセッション」ホームページから。

取材・文/松田謙太郎

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