COLUMNコラム
「カバン持ち」も有効! 後継者育成のポイントとは?
中小企業の事業承継において、最大のポイントといえばやはり「後継者選定」でしょう。この難問を無事にクリアしたら、次に考えるべきは「後継者育成」です。本記事では、後継者育成のポイントについて解説します。
目次
後継者育成の大前提
まずは後継者育成の前提として、後継者不在の現状や、後継者育成の定義を確認しておきましょう。
後継者不在の現状
日本の中小企業の後継者不足は、今や社会問題のひとつとなっています。
帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査」(2021年)によると、対象企業およそ26万6000社のうち、後継者が「いない」または「未定」と答えた企業は16万社にのぼりました。全国の企業のうち、実に60%ほどが後継者不在に陥っているのです。
後継者育成の定義
後継者育成とは、企業の後継者候補を、経営者としてふさわしい人材へと育て上げることをいいます。
第三者承継のみならず、親族内承継においても、後継者育成は重要な道程。会社の存続を見据えると、後継者育成は、売上を確保するための施策と同様に重要な取り組みだといえるでしょう。
後継者育成を怠ると、何が起こるのか?
では、後継者育成を怠ると、どのような問題が生じるのでしょうか。そのリスクを簡単に確認しましょう。
①企業イメージが低下する
1つ目は、企業イメージの低下です。十分な後継者育成が行われないと、関係先を戸惑わせ、企業イメージの低下につながりかねません。会社は信頼関係によって成り立っているということを、あらためて認識しておきましょう。
②売り上げが減少する
2つ目は、売上の減少です。企業イメージが低下することで、取引自体を取りやめようとする関係先も発生するでしょう。
また、誤った施策によって、会社を違った方向に導いてしまう懸念もあります。
③人材の定着率が下がる
現経営者が魅力的であればあるほど、十分な育成施策を施されない人が後継者になると、それについていけない従業員も多く発生するはずです。
その結果、人材の定着率が下がるだけでなく、残った従業員のモチベーションにも影響するでしょう。
こうした事態を防ぐためには、後継者育成に注力するのではなく、可能な限り早い段階から次の後継者を指名し、それを社内に知らせておくことが大切です。
④会社存続の危機に陥る
後継者選定と育成には、ある程度の時間がかかるものです。適切なタイミングで適切な後継者を指名・選任できなければ、倒産や廃業のリスクさえあります。
後継者育成のポイント
最後に、後継者育成のポイントを紹介します。これらを適宜組み合わせ、適切な後継者育成を行いましょう。
①早期から育成を行う
何より重要なポイントは、早期から後継者育成に着手することです。
経営者の交代は、いつ発生するかわかりません。「このタイミングで引き継ごう」と計画していても、現経営者の健康上の問題や、家族などの事情によって、タイミングが早くなることは十分考えられます。
可能な限り早い段階で後継者候補を選定し、育成プログラムを施しましょう。
②社内のさまざまな業務・部門を経験させる
社内の主要業務を経験させることもポイントです。
営業はもちろん、人事・労務や総務、製作など、各種業務の経験を積ませ、自社の業務の全体感をつかませます。この経験なしには、広い視野を持って施策を検討・実行することはできないしょう。
③現経営者の「カバン持ち」をさせる
一定期間、現経営者の「カバン持ち」をさせることも効果的です。
経営者のそばに置き、打ち合わせや外出などに同行させながら、経営者としての心構えや自社の経営理念、経営ノウハウなどを引き継ぎましょう。
④幹部を任せる
幹部を経験させるのも一つの手です。経営に参画させることで、経営の知識がつき、リーダーシップを発揮できる人材へと育成できるでしょう。
またこの施策により、従業員に「この人は後継者候補なんだ」と知らせることも可能です。
⑤他社で修行させる
若いうちに数年間、他社での勤務を経験させましょう。他社のノウハウを自社に持ち帰り、新しい風を吹き込んでくれるでしょう。また、広い人脈の形成にも役立ちます。
⑥セミナーや経営者塾に通わせる
セミナーや経営者塾に通わせることで、経営者として必要な知識やノウハウが身につくとともに、経営者仲間をつくることもできます。
⑦他社事例に学ぶ
気軽に着手できる施策として、他社の成功・失敗事例から学ぶことが挙げられます。
ジャパネットたかたや西松屋、ふくやなどの事業承継成功事例から、成功者のエッセンスを吸収しましょう。
ジャパネットたかたの成功事例
(「「二代目×息子」が感じた、事業承継の難しさ ――父との対立を乗り越えた先にあるもの/髙田旭人インタビュー」)
西松屋の成功事例
(「父との「阿吽の呼吸」でスムーズに承継!三代目社長が事業承継を成功させた仕組みに迫る/大村浩一インタビュー#1」)
ふくやの成功事例
(「「常に挑戦する会社でいたい」―明太子のふくや・5代目経営者の「攻め」の経営/川原武浩インタビュー#1」)
まとめ
後継者の選定や育成にはまとまった期間が必要となります。いざというときに備えて、早期から取り組んでおきましょう。
なお、後継者教育(育成)に関しては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
(「事業承継における後継者教育のポイントは?」)
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