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従業員を休ませるより、研修・訓練を重視せよ 事業縮小する企業向けの国の雇用調整助成金制度がシフト変更

雇用調整助成金とは、事業活動を縮小せざるをえなくなった企業が、従業員を一時的に休業させたり、研修などの教育訓練を受けさせたりして雇用を維持した場合、企業が支払った休業手当や賃金の一部を助成するものだ。国は今年4月、助成金制度を改定し、休業よりも教育訓練と雇用維持に重点を置くように、制度をシフトさせた。

「雇用維持」より「リスキリング」重視に

これまでの制度は、従業員の雇用を維持した企業に対して、中小企業は賃金などの負担額の3分の2、大企業には2分の1を助成してきた。さらに、従業員に教育訓練を受けさせた場合は、中小企業・大企業ともに1人1日あたり1200円を加算してきた。支給対象となる教育訓練は、外部講師を招いた研修などとは別で、業務で必要となる免許を得るための外部講習などが該当する。

4月からは、教育訓練を実施した日数に応じて、雇用調整助成金の金額が変わることになった。教育訓練の実施が少なければ助成額が従来よりも減り、多ければ増える形だ。

具体的には、休業や教育訓練によって従業員の雇用を維持した日数のうち、教育訓練を実施した日数が10分の1に満たない場合は中小企業の助成率は2分の1、大企業は4分の1となり、従来の助成額より減った。なお、この場合も従業員に教育訓練を受けさせた場合の加算額は1200円で変わらない。

一方、雇用を維持した日数のうち、教育訓練を実施した日数が5分の1以上の場合は、中小企業、大企業ともに助成率はそれぞれ、従来の3分の2、2分の1と変わらないものの、教育訓練を実施した際の加算額が1800円に増額された。教育訓練を実施した日数が10分の1以上5分の1未満の場合は、助成率、加算額ともに従来と変わらない。

事業承継の直面する中小企業が活用したい

日本経済はいま、事業承継が大きな課題となっている。経営者の平均年齢は過去最高を更新し続けている。事業承継を安定的に進めていくには、ビジネス環境や産業構造の変化があっても、従業員の雇用を守ることが求められる。つまり、従業員のDX化に関するリスキリング(学び直し)などは必須だ。

雇用調整助成金は従業員のリスキリングを進めながら雇用を維持する中小企業への助成割合が高く、利用しやすい制度だ。うまく活用し、企業の持続的な成長に生かしてほしい。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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