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株式併合の手続はどうしたらいい? 複雑なプロセスをわかりやすく解説!

企業の意思決定をスムーズにする手法の一つとして「株式併合」と呼ばれるものがあります。コストを削減できるほか、事業承継を成功させやすくなる点も株式併合のメリットです。この記事では、株式併合の目的や注意点、詳細な手続方法について解説します。

そもそも株式併合とは

株式併合とは、複数の株式を1つにまとめる手法です。たとえば、今ある100株の発行済株式を4分の1に併合すると、25株まで数が減ります。発行済株式の総数を減らすことで、1株あたりの経済的価値を高めたり、株券の発行費用や株主の管理費用を削減したりできます。資本金を変更することなく、コスト削減が可能になるため、会社の収支を根本から見直したい場合に有効な手段です。

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株式併合の手続方法

株主総会を招集する

取締役会で株式併合の実施が決定したら、まずは株式総会を開きましょう。株主の招集にあたっては、会社法第299条1項で定められた期日(1週間前)までに通知をしておく必要があります。

事前書面の備置き

続いて、株主総会での決議事項を記した事前書面を作成します。当該書面は、株主総会の2週間前もしくは株主へ通知した日のどちらか早いほうから、効力発生後6か月が経過するまで継続して備え置いておかなければなりません。こちらは会社法第182条の2第1項に記載があります。

株主総会で決議をおこなう

株式併合が承認されるためには、株主総会での「特別決議」が必要になります。特別決議とは、議決権の過半数を持つ株主が出席し、そのうち3分の2以上から賛成票を獲得することです。

株主総会では、株式併合の実施に至った背景や、以下の4項目について説明する必要があります。

1.併合の割合
2.効力発生日

3.種類株式発行会社である場合は、併合する株式の種類
4.効力発生日における発行可能株式総数

決議された事項を通知・公告する

特別決議が成立したら、次は決議内容について株主(または登録株式質権者)へ通知・公告します。期限は効力発生日の「20日前」までです(会社法181条第1項および第182項の4第3項)。併合の割合をどのようにするかをメインの内容とし、書面にしたためて通知します。

また、株式併合が正式に決定した後は、株主から詳細についての問い合わせが殺到する事態も考えられます。手続に時間を取られてしまいがちですが、できる限り誠意を持って対応しましょう。

反対株主の株を買い取る

反対株主とは、株式併合の実施に賛成しなかった株主のことです。会社法第182条の4第1項により、反対株主は自らが持つ端数(一株未満)の株式を買い取るよう、会社に請求する権利を有します。

買取価格は両者間の協議により決定され、会社は効力発生日から60日以内に支払いを済ませなければなりません(会社法第182条の5第1項)。また、効力発生日から30日以内に買取価格が決まらなかった場合は、裁判所に相談し価格の決定を委ねられるようになっています(同第2項)。

変更登記申請をする

もう一つの手続として、効力発生日から2週間以内に、法務局で変更登記申請をおこなう必要があります。株券を発行している場合は、効力発生日の30日前までに、株券の提出に関する公告と、株主への個別通知をしなければなりません。株券を発行していない場合は、その旨を証明する書面の用意が必要になります。

株式併合は何を目的におこなわれる?

少数株主を排除するため

会社がある方針を定め、事業を進めていこうとするとき、特定の少数株主によって反対され、スムーズな意思決定を妨げられる場合があります。こうした少数株主が持つ株式を、会社が強制的に買い取るなどして、彼らを会社から追い出すことを「スクイーズアウト」といいます。スクイーズアウトにはさまざまな方法がありますが、株式併合は特に有力な方法です。

株式併合を利用し、少数株主が持つ株式数を1桁未満にまで減らし、買い取ってしまえば、会社の障壁となる反対意見を排除できます。

事業承継をスムーズにするため

株式併合は、事業承継を実施する際にも大いに役立ちます。たとえば、もともと大きな影響力を持っていた大株主が亡くなり、その株式が複数の相続人に分配されたとします。場合によっては、株主総会の指揮をうまくとれず、意思決定が思うようにいかなくなる事態も考えられるでしょう。そこで、事業承継者の持ち株比率をあらかじめ100%にしておくことで、リスクを回避してスムーズに事業承継を進められます。

株式併合の注意点

投資意欲を下げてしまう

株式併合によって株式の数を減らしても、同時に1株あたりの価格も調整するため、株式の価値そのものは変わりません。ただし、併合に伴って投資単価がおのずと上昇、つまり株式の最低購入金額が上がることには注意が必要です。

最低購入金額が上昇すると、投資家は購入をためらって投資へ参入しづらくなります。株主数の減少により、結果として株価の下落を招くこともあるため、併合の割合は慎重に決めなければなりません。

手続が細かく面倒

株式併合を行う際は、煩雑で難しいプロセスを多く踏まなければなりません。その決まりは主に、会社法という法律によって定められており、手続にあたっては同法を遵守する必要があります。「○○日前までに」のように、詳細に期限が定められている手続もあるため、社内でしっかりと連携し、スピード感を持って臨むことが大切です。

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まとめ

株式併合をおこなうことで、少数株主を削減したり、事業承継後の事業推進を円滑にしたりすることが可能です。実施にあたっては、会社法にのっとりさまざまな手続を踏む必要がありました。やや難しそうに思えるものの、一つひとつこなしていけば問題なくクリアできます。

また事業承継に関しては、以下の記事で支援制度についての紹介をしています。ぜひこれらの記事を参考にして、事業承継および株式併合のスムーズな進行に役立ててください。
「事業承継の支援制度おすすめ3選! 活用したい金融面の支援制度をくわしく解説」はこちら

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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